本屋がなくなると本当に困るのか?

下の写真は、21日の朝日新聞読書欄に載っていた記事です。

本屋がなくなったら、困るじゃないか』に関する記事です。

この手の書籍は何冊か出ていたと思います。本屋が減っているというニュースも時々思い出したように流れますし、統計的にもそうなのでしょう。ただ書店の数だけを比較しても意味はない、売り場面積(坪数)で比較しないと、という意見もあります。ただし、通路の幅とか棚の高さとか、坪数だけでは計れないという意見も聞かれます。

結局、そうなると比較しようがなくなるわけで、こういう場合は思いきって、ある程度の批判は承知で統計などの数字を使うしかないと思います。

で、都道府県別の書店の数ですが、こんなページに表が載っていました。「2013年5月1日現在」の数字だそうです。そして、数年のタイムラグはありますが、「2016年4月1日現在」の都道県別の人口です。この二つから、人口10万人あたりの書店の数を出してみますと、上位は

高知県(16.33)、香川県(16.27)、石川県(15.5)、徳島県(15.47)、京都府(15.36)

となりました。そして下位は

神奈川県(8.06)、埼玉県(8.59)、沖縄県(8.78)、千葉県(8.94)、佐賀県(9.12)

です。高知県と神奈川県で倍の開きがありますが、全体的には11店から12店あたりに集中していて、それほど極端な地域格差は感じられませんし、都会と田舎とで書店の数に大きな違いがあるとも言えないようです。あえて言えば、上の下位を見てもおわかりのように、都会ほど書店が少ない傾向が見られるといったところでしょうか? 東京都は22位、広島県が27位、愛知県が28位、大阪府が29位、宮城県が32位、兵庫県が40位、福岡県が41位です。

もちろん、上に書いたように坪数を加味すれば都会の順位は上がってくると思いますが、身近に本屋があるかないかという視点で考えた場合には、都会ほど書店が少ないと言えるかもしれません。

で、それでどの程度人々は困っているのでしょうか? 確かに本屋をよく利用する人は困るでしょうけど、それはどんな小売業にだって言えることです。そして近所のお店がなくなるのは、近所の人たちが使わなくなったから、行かなくなったからであり、それはその周辺の住民にとってそのお店がそれほど必要とされていなかったからにほかなりません。

もちろん後継者がいないのでお店をたたむ、ということもあるでしょうが、多くの場合は需要がなくなったから消えていくものだと思います。それをなくなってから困ると言っても、だったらあなたたちが前々からもっと利用すればよかったのではないですか、という気がします。

「だって、行ったって欲しい本がないから」という意見もよく聞きます。本のように多種多様の商品が出ていて、お客のニーズも店でバラバラですと誰もが満足する品揃えなんて無理です。どの程度の品揃えを目指すか、そこが難しいところだと思います。アマゾンだって自社の倉庫に置いてあるのはほんの一部ですから、置いてない本に関して言えば、街の本屋に注文するのもアマゾンを使うのも流通上はスピードに変わりはありません。

最近流行りのセレクト型の書店、あるいはカフェ併設の書店。カフェ併設の場合はカフェの売り上げで賄っているのでしょうから話が違ってきますが、ではセレクト型の書店ならどこでやっても成り立つのでしょうか? 例えば電車もないバスも通っていないような田舎でやっていても、人は来てくれるのでしょうか? そこにしか置いていない本があるなら行くかもしれませんが、インターネットが発達した現在、そこでしか手に入らない本なんて数えるほどでしょう。おしゃれにディスプレイしたって、誰も来なければ見てくれる人もいないし、商売としては成り立たないのではないでしょうか? やはりそれなりに人が集まるところ、集まりやすいところでないと、という気がします。

と悲観的なことばかり書いてしまいましたが、本を必要とする人にとって本屋がなくなってもアマゾンや楽天ブックス、セブンネットショッピングなどのネット書店があれば、とりあえずは入手は可能なので問題ない、という人もいるはずです。あるいは紀伊國屋書店やジュンク堂書店などのように電子書籍ストアのあるところなら、電子書籍を買ってもよいでしょう。本屋がなくなるということと、本がなくなるということ(紙か電子化は別として)は別問題ですから、今後も本屋がどんどん無くなっていったとしても意外と代替産業が発達して、それなりに便利にやっていける、決して困るということはならないのではないか、という気もします。