そして恩師を思い出しました

文春新書の『習近平の密約』読了。前後して刊行された講談社現代新書の『「反日」中国の真実』と併読するとよいかと思います。

 

文春の方は習近平時代とこれからの日中関係を、講談社の方は習近平時代に至るまでの日中関係を取り上げているというのが大雑把な違いでしょうか? ですから一部重複するような記述も見られます。

で、後から読んだ文春新書ですが、加藤氏の「あとがき」に次のようにありました。

強がっているように見えても、実は多くの矛盾を抱え、もがき苦しんでいるのが内情である。

こういう中国の真の姿、多くの日本人には理解されていないのでしょうか? あたしなどほんの数回の中国旅行の体験しかありませんが、それでも中国人がみずからのメンツのために振り上げた拳を下ろせないでいる様子が理解できます。

反日デモなども、ある程度は現状に対する不満(←決して日本に対する不満だけでなく)のガス抜きとしての効果があるわけで、ガス抜きとして機能している限りは当局も目をつむっているのでしょう。ですから、適度に、あくまで適度に日本がそういう刺激を与えてくれることは中国政府にとっても実は好ましいのではないかと思います。

もしこれで日本がまるっきり中国人の心を逆なでするような行為をしなくなったりしたら、民衆の不満は日本へ向かわず政府に向かうでしょうから、そうなってはマズイと中国政府は思っているはずです。もちろん、その逆に日本があまりにも挑発的な態度を繰り返せば民衆の激高も手が付けられなくなりますし、政府としても日本に対して強く出ないとならなくなるので、これも困る状態でしょう。そこらあたりのさじ加減をわかって日本政府が対応できていればよいのですが……

さて、この「あとがき」にはもう一つ、こんな注意を引く文章がありました。

習近平政権の掲げる強国化路線が確実に進み、日本を大国と見なさなくなったとき、「反日」デモも起きなくなる。

この文章を読んで大学時代の恩師の言葉を思い出しました。あたしが学生の頃は中国はまだ改革開放を始めたばかりで、日本の戦後間もない頃の雰囲気でした。むしろ台頭著しかったのは韓国です。韓国も日本に対する対抗意識はものすごく、現在と同様な嫌日感情がありました。

そんな情勢下、あたしの恩師は、韓国がさっさと経済成長を遂げ、日本を完全に追い抜いてくれればよい。そうすれば嫌日感情なんてなくなるから、と語っていました。日本に反感を持つのは、それはまだまだ自国が日本にかなわない、日本に負けているという事実を素直に認めたくない気持ちの裏返しなわけで、名実共に誰が見ても日本より優れているとなったら、そんなわだかまりはなくなるというものです。

あたしの恩師はそんなことを教えてくれました。恩師亡き今、上掲の文章を読んで、中韓の違いはあるものの、恩師の謦咳に接したような気がしました。