100冊は多い?

書店を回っていますと、今年も“夏の文庫フェア”の季節が始まったようです。いわゆる“夏100”ですね。夏の読書感想文での購入をあてにした文庫のフェア、あたしの子供のころにもやっていたのか否か、今となっては覚えていませんが、少なくとも現在ほど大規模なフェアはなかったと思います。それに百冊ものフェアをやっていたのでしょうか?

ここ数年、いや十数年でしょうか、文庫フェアに参入する出版社も増え、この“夏100”も前半戦と後半戦に分かれているようで、現在展開中なのは前半戦というわけです。

まずは上記の三社。左から角川文庫「カドフェス」、新潮社「新潮文庫の100冊」、集英社「ナツイチ」の無料小冊子です。タレントやキャラクタアーを遣って読者の注意を集めるのはここ数年のトレンドですね。数年前にはAKB48がイメージキャラクターになっていましたよね。

で、気づいたのですが、新潮社以外は「100冊」という言葉を使っていないことです。冊子の索引で数えてみると、確かに角川や集英社は100冊(アイテム)はなさそうです。このご時世、100冊分のフェアスペースを確保するのも大変なので、規模を縮小しているのでしょうか? でも、それなら思いきって50冊程度にすればよいのでしょうけど、どちらも90冊前後はありますから、ほぼほぼ100冊ではあります。あえて「100」を前面に打ち出さないというのは、100冊もないからなのか、100という数字の多さが読者に引かれてしまうことを恐れてなのか、あたしにはわかりません。

ちなみに集英社は上のような冊子(チラシ?)も置いてありました。「読書美少女コレクション!」とあります。同社の雑誌「セブンティーン」のモデルさんたちのおすすめを紹介したチラシです。裏面には現役の一般高校生の推薦も載っています。「美少女」を売りにしているってことは男子高校生や大学生あたりの購買を狙っているのでしょうか。でもセブンティーンモデルですから、「セブンティーン」の読者である女子中高生がターゲットでしょうか? いずれにせよ、若い世代へのアピールなんでしょうね。これはこれで大事なことだと思います。

さて、上の写真は新潮文庫の冊子のジャンル分けです。「恋する本」「シビレル本」「考える本」「ヤバイ本」「泣ける本」というカテゴリーで新潮文庫を紹介しているようです。ちなみに「ヤバイ」といっても危ない本のことではなく、ざっと見た限り、ファンタジー的なものが多いようです。

新潮文庫がカテゴリーを立てて、そこに文庫を落とし込んでいくスタイルなのに対し、角川と集英社は文庫それぞれにアイコンを表示して、どんな本なのか表わすようにしています。

ちょっと写真が不鮮明ですが、「受賞作」「映画化」「泣ける」「胸キュン」「どきどき、ハラハラ」「怖い」「ためになる」「元気になる」とあり、一つの本に複数のアイコンが付いているものもあります。もちろん、新潮文庫の冊子と同じように、全体を大きく「名作」「夏が好き!」「あたまの栄養」「青春いっぱい!」「感動する!」「手に汗にぎる!」「人気のロングセラー」と分けてもいます。

そして最後の集英社文庫のアイコンは「他人の恋を体験しよう」「涙なくしては読めません」「とにかく笑いたい人に!」「読めばワクワク心が躍る!」「途中でやめられない!」「哀しみ心の栄養素」「夏は爽やか小説です」「驚きのどんでん返し」となっていて、これも一つの本に複数のアイコンが付いているものが多数あります。また、同じように小冊子全体も「勇気がもらえる旅へ」「優しさの旅へ」「自分探しの旅へ」「冒険の旅へ」「知の旅へ」「笑いの旅へ」「青春の旅へ」「考える旅へ」という分け方がされています。

それにしても、これだけ手の込んだ小冊子が無料で配布されているなんて! フルカラーですし、全国で配布されているわけですから、一つの書店で数十冊から数百冊として、いったい何部作っているのでしょう? それをすべてタダで配るなんて、儲かっている会社はすごいものですね。