五月人形は怖い?

五月人形の表情がかわいくなっているというニュース

あの人形って魔除けの意味があったと思うので、だから勇ましい顔立ちだったと思うのですけど、それが優しく、可愛らしくなってしまったら、魔除けの意味がないのではないでしょうか?

と、最初にこのニュースを聞いたときは思いました。そして、それと同時に思い浮かんだのは、ジャポニカ学習帳の表紙の写真。

これも以前に、「昆虫の写真は怖い」という意見が寄せられて、昆虫の写真を使った学習帳が消えたというニュースがありましたね。この時は、親、特に母親が虫が苦手だからといって、子供のノートの絵柄にまで嫌悪感を示すのはどうかと思ったのですが、カワイイ路線はドンドン拡大の一途のようです。

この二つのニュース、人形の顔つきと昆虫の写真とでは事情は異なりますし、虫をかわいらしく描いて虫でなくなってしまったら本末転倒ですから、なかなか難しいところですが、どちらにせよ、あたしの最初の感想は「愚かしい行為だな」というものでした。自分の好き嫌いを子供に押しつけるなんて、と思いました。五月人形にしろ昆虫の写真にしろ、子供自身がどう思うか、どう感じるかが肝心なのではないでしょうか?

と考えながら、「でも、母親が嫌うものは子供も嫌うかな?」と思ったりもします。子供も母親に好かれたいと思えば、自分の感情を押し殺して母親の好みに迎合することはあるようですから、本当は虫の写真が表紙になっているノートが欲しくても、それを言い出せないということはあるかもしれません。

が、このニュースを聞きながら、しばらくしてあたしは考え直しました。

この二つとちょっと異なるのですが、子供のころ、わが家の書架にあった偉人伝の表紙が怖いということを書きましたが、それを思い出したのです。当時の偉人伝は、かなり劇画調のイラストで、シュヴァイツァーやヘレンケラーなどが描かれていました。ブスッとして怖そうな爺さん、婆さんの絵、子供には正視に耐えませんでした。

だから、最近のゲームに出てくる歴史上の人物のイラストはイケメンだったり、文庫本の表紙もイマドキのイラストになっていたりするのですよね。

さらに思い出すのは、偉人伝の表紙だけではなく、小学校のころの音楽室に飾ってあった音楽家たちの肖像画です。ベートーヴェンやバッハなど、ものすごく怖い顔が、それも一人や二人ではなく大勢で教室の上の方から見下ろしている音楽室は、それこそ学校の階段でした。あれを怖いと感じたことのある小学生はかなり多いのではないでしょうか?

とまあ、偉人伝や音楽室など、親の好みとは関係なく怖く感じるものってたくさんあるわけで、五月人形や学習帳にクレームを付ける人も、自分が子供のころそういう思いをしたからなのでしょうね。

それにしても、音楽室の肖像画って、今も飾っている学校が多いのでしょうか? あれって文部省の指導があったのでしょうか?