ヒリヒリ感、ちょっと少なめ?

宮木あや子さんの新刊『喉の奥なら傷ついてもばれない』読了。短編集です。

宮木さんと言えば、あたしの個人的な印象では、これでもかというくらい主人公(多くの場合、美少女)が痛めつけられ傷つけられ、まるで救いのない深みにどっぷりとはまってしまうような作品を思い描くのですが、そういう先入観で読み始めると、今回の作品はそれほど痛い感じはありません。

では、本作はどんな感じなのかと言いますと、一見普通に、そしてささやかだけど平凡な幸せを享受しているかに見える主人公が、ちょっとしたことから道を踏み外してしまうというストーリーが集められています。この踏み外し方が、もちろんパートナーに原因があったりもするのですが、どちらかというと踏み外す主人公自身に原因があり、その原因というのも、そんなことで今享受している幸せを壊してしまうのですか、と言いたくなるような事例ばかり。

ストレス社会に生きる女性たちはかくも脆いものなのか。

そんな中、もっとも印象的で湿度も高く、後味の悪さが最高だったのが最後の一編。この作品、と言うか、この親子(母娘)、きっとループしますね。いや、もっと狂気の世界に堕ちていきそう。そんな予感を感じさせながら終わります。