柴田元幸ゼミ?

午後から、ブックファースト新宿店で柴田元幸さん、小林久美子さんのトークイベントでした。柴田元幸さんは言わずもがな、シルバーウイーク明けにはミルハウザーの久々の翻訳『ある夢想者の肖像』がいよいよ発売になります。小林さんはそれに一ヶ月ほど先だって『生まれるためのガイドブック』を上梓したばかり。お二人に、この両翻訳書、並びに昨今のアメリカ文学について語っていただきました。

さて、イベントのスタートを待つ会場はこんな感じです。あとはお二人の登場を待つだけ。

もちろん、ミルハウザーの既刊や小林さんのもう一つの翻訳『ぼくは覚えている』もテーブルには並んでおります。これで準備万端ですね!

もちろん、先行販売の書籍もほら、この通り、しっかり用意してあります。ミルハウザーの新作を鶴首で待ち焦がれていたお客様にとっては、今日この会場で初めて目にするわけですよね。どんな感想を持っていただけるか、気になります。

さて、トークイベントの内容ですが、いらっしゃった方がブログやSNSなど書いてくれるのではないかと思いますので贅言はしません。それに、あたしのようなアメリカ文学ド素人には語れるほどの力量はございませんし……(汗) なので、ざくっとした感想を述べるに留めたいと思います。

一言で言って、小林さんと一緒に柴田ゼミを受けているような感じでした。最初の写真でわかっていただけるかも知れませんが、もし会場の椅子に小さなテーブルが付いていたら、ドラマや映画で見るような、アメリカの高校の教室のような感じです。小林さんと柴田さんの丁々発止のやりとりは、「ああ、たぶん柴田さんは大学出こんな風に授業をなさっていたんだろうなあ」と思わせるものでした。

そして、一番すごいと感じたのは、柴田さんの実に若々しい吸収力、飽くことなき好奇心です。柴田さんと言えば日本におけるアメリカ文学の第一人者であると誰もが認めている方ですが、その柴田さんが若い小林さんから、さらにいまのアメリカ文学について学ぼうという姿勢が見えますし、自分とは異なる小林さんの感じ方、読み方に感心してしきりと頷いていらっしゃいました。決して大先生としてふんぞり返るのではなく、誰からも教えを受けるという謙虚さ、これには頭が下がります。先生がこういう感じだからこそ、生徒である小林さんものびのびと思ったことを開陳できるのではないでしょうか。羨ましい師弟関係です。

そして、このトークイベントを聞いていて思いだしたのは、数年前に新宿のジュンク堂書店で行なわれた柴田さんと藤井光さんのトークイベントです。藤井さんも小林さん同様、柴田さんとは異なる視点からアメリカ文学をチョイスして日本語に翻訳紹介してくださっている方ですが、この時も柴田さんは藤井さんの話に熱心に聞き入り、あたしの記憶が間違っていなければ、「これからのアメリカ文学については藤井さんに聞かないと……」とまでおっしゃっていました。

若い研究者を前にして、決して偉ぶることなく、知らないことについては熱心に話を聞き、旺盛な知識欲でどんどん吸収していく。この謙虚さ、すごいです。たぶん今日のトークイベント、お客さんよりも柴田さんと小林さんが一番楽しんでいらっしゃったのではないか、そんな風な感じです。その楽しさに巻き込まれたからなのか、最後の質疑応答も、あたしの印象では、ゼミの学生が「先生、じゃあ、これはどうでしょう?」と質問を投げかけている感じを受けました。

さて、『ある夢想者の肖像』をご購入いただいた方、このシルバーウイークで読んでみてください! 長編だからこその面白さ、小林さんも力説されていましたし!