分野別図書目録の思い出

昨日は、人文図書目録刊行会の総会でした。

それ、何? と思う方も多いかも知れませんが、本屋さんのレジの近くとか、目録やパンフレットなどが置いてあるコーナーに、下の写真のような冊子が置いてあるのを見たことはありませんか?

この三冊が、人文図書目録刊行会が発行している人文3目録です。「哲学・思想」「真理」「社会」の三分野です。現在日本で流通している当該ジャンルの書籍をほぼすべて網羅している図書目録です。

こういった分野別の目録は、さまざまな出版社の書籍が収録されていますので、そのジャンルに興味のある方にとってはきわめて有用なツールではないでしょうか? この人文ジャンル以外にも多くの図書目録が出ていまして、なんとウィキペディアにも立項されています。いくつかは知っていましたが、こんなに種類があるとは、正直あたし自身も驚いています。とにかく書誌情報がずらずら並んでいるだけの、興味がない人には味も素っ気もない本ですが、好きな人にはたまらないものです。

ただ、この数年、個人的には不満もあります。別に「時代はネットだろ」という意見に与するつもりはありません。確かに検索の早さなど、ネット、デジタルの方が格段に優れていることは明らかです。各出版社が出している出版図書目録もかつてほどの需要がないことは重々承知しています。

でも、それでも「やはり紙がいいよね」という人がまだまだ多いのも事実で、個人的な感触では、司書とか、そういう職業の人を除くと、この手の目録を欲しがる人というのは「デジタルよりはアナログ」な人が多いように思います。

そういうデジタルか否か、ということではないあたしの不満は、下の写真です。

目次のページです。これがどうしたの? と言われそうですが、いかがでしょう? 素っ気ないですよね。別にレイアウトとかフォントを変えろ、と言いたいのではありません。個人的な気持ちとしては、この目次に英文表記を添えたらよいのに、という不満がこの数年あります。

例えば上の写真。目次の後、扉ページですが、ここも日本語だけで英語は併記されていません。こういう部分に英語を併記したらどうだろうか、いや、併記すべきだというのがあたしの意見であり、不満なのです。

なんで英文が必要なの、と問われると、その方が海外の方にも扱いやすくなるからです。以前韓国の出版社の目録を見たことがあるのですが、中身は韓国語、つまりハングルだけなのですが、タイトルまわりとか、ポイントになる部分には英語が併記されていたのです。そうると、ハングルはわからなくても、「ああ、ここは小説のページか。ここは芸術書のページか」などと、なんとなく内容に親しみが持てました。せめて、こういう目次のところだけでも英文を併記すれば、海外での需要が広がらないかな、と思います。(海外だからこそデジタルでしょ、という意見もあると思いますが、そうなればなおさら英文平気は必須にならないでしょうか?)

とまあ、そんなことをぼんやり思いながらの昨日の総会でした。この分野別の目録っていつごろからあるのでしょう? 正確なことはわかりませんが、あたしが中学生・高校生のころには既に見かけていたので、30年以上はあるのだと思います。

当時からいまの分野別目録が全部あったのかは知りません。ただ中高生のころのあたしは休みなると神保町へ来て、東京堂や三省堂、書泉などを巡っていたものです。いまの三省堂書店神保町本店があのようなビルになってオープンした当日に行ったのを覚えています。確かオープン記念の景品で、フロアガイドになったプラスチック製下敷きをもらったという鮮明な記憶も残っています。

が、話を目録に戻しますと、当時、この手の分野別目録は東京堂書店のレジのそばへ行くと目録などを積んである小さなテーブル、台があり、あたしは興味がある哲学や歴史の目録をもらって帰ったものです。書店店頭に置いてある目録はすべて無料ですから、とても嬉しかったのを覚えています。帰りの電車の中で目録を開き「この本、欲しい」と思いながら、買えもしないのに欲しい本に印を付けたものでした。

こういった目録が年に一回作られていることはわかっていたので、その時季になると東京堂へ行っては目録を探したものでした。東京堂以外では、これだけ各種分野別目録を置いてある書店は、当時はありませんでしたから。ところが、あるとき東京堂へ行っても目録が見つからないことがありました。タダで配られているものなのでお店の人に聞くような勇気は中高生時代のあたしにはありません。

今年はまだなのか、それとももうなくなったのか、聞けないまま、何度か東京堂へ足を運んでも見つからないので、あたしはある行動に出ました。これらの目録の裏表紙には発行所としてトーハンの住所が書いてありました。これがどういう会社なのか、当時のあたしにはわかりませんでしたが、とにかく神保町へ行くついでに飯田橋の駅からてくてく歩いてトーハンへ向かい、受付で目録が欲しい旨を伝えて、目的の部署を教えてもらいました。

大人社会というと大袈裟ですが、いかにもオフィスなトーハンの社内、蜂がない高校生(だったと思います)のあたしはキョロキョロしながら目的の部署を見つけ、来訪の趣旨を伝えました。トーハンの人はにこやかに対応してくれたのですが、しっかり代金を請求されました。

そうなんです。書店店頭ではタダでもらえる目録も、実は裏表紙には頒価が書かれていて、売り物だったのです。学生の身分としてはかなりの金額を請求された記憶がありますが、ここまで来て「高いから要りません」とも言えない弱気なあたしは、言われるがままにお代を払い、目録を受け取って帰路に着きました。

分野別目録の苦い思い出です。