ショッピングモールの近未来?

今朝の朝日新聞にこんな記事が載っていました。

アメリカでショッピングモールが苦境にあえいでいるという記事です。日本もこの数年来、大都市近郊から地方に至るまでショッピングモールが乱立しています。状況はアメリカと変わらないのではないでしょうか?

出版社の営業という立場から見ると、郊外にショッピングモールが出来、そこに大型の書店が入ると言うのは販売機会が増すということになりますから、一概に否定すべきことではありません。特に巨大モールですと、中に入る書店の坪数もかなり大きくなりますから棚はふんだんにあります。小さな書店ですと語学書売り場は英語ばかり、せいぜい中国語や韓国語、仏独をちょっと置いていますということになりがちですが、大型店ならマイナー言語まで置くスペースが出来ます。文芸だって、日本人作家のものだけではなく、海外文学を並べることが可能になります。もちろん必然的に専門書などの棚もそれなりに充実してくるでしょう。

とまあ、よいことづくめのような感じですが、その一方で、昔からの商店街にあった老舗の書店の客が奪われ、経営状況が厳しくなるということもあり、なかなか難しいところです。特に、老舗書店で本を買ってくれていたような人が郊外のモールにまで足を延ばすのか、そのあたりがわかりません。郊外のモールはどうしても中高生や若い夫婦、家族が中心という印象がありますから。でも、こういった現象は書店に限ったことではなく、他の業種でも同じようなことが起きているのではないでしょうか?

さて、以上は一般論で、実際に出張で地方へいったときに、あるいは首都圏の郊外のモールなどへ行ったときに、実際に目にしてどう感じるのか……

訪れるのは平日の昼間が多いので最も集客ある土日の状況はわかりませんから、多少は一方的な見方、偏見が混じっているかと思いますが、その前提で書かせていただきますと、意外とお年寄りが目につきます。午前中からおじいさんやおばあさんが娘と孫と一緒に買い物に来ていたりするのが目に留まります。あるいは娘や孫抜きで、おじいさんやおばあさんだけでドトールなどのコーヒーショップで珈琲なんか飲んでいる姿を見かけます。

あたしの一方的な思い込みでは、お年寄りがそういったファストフード店へ入るという予想はなかったので、これは意外な、そして新鮮な驚きでした。そして、午後になると、2時や3時すぎくらいからは学校帰りの学生が多くなるのは予想どおりです。こういった平日の客層を見る限り、諸外国語や海外文学や専門書を売るのは難しいなあと思うのが正直な気持ちです。もちろん、若者向けのファッションブランドも書店以上に厳しいのではないでしょうか?

厳しいだろうと感じる、その証拠と言ってはなんですが、遠いので頻繁には行けませんが、それでも年に一回か二回訪れるようなモールでは「ニューショップ、オープン」とか、「リニューアルオープン」というテナントの貼り紙をよく見かけます。新しいお店が出来ると言えば聞こえはよいですが、つまりその前に入っていたテナントが立ちゆかなくて撤退したということですよね。売れないから諦めた、はっきり言ってしまうと、そういうことではないでしょうか? こういう貼り紙が増えれば増えるほど、そのモールは調子悪いんだな、と感じてしまいます。

 

こういった郊外論もこの数年来、いろいろな本が出ています。それなりに売れた先駆的なのものは『ファスト風土化する日本』ではないかと思いますが、いかがでしょう? そして論点こそ少しズレますが、あたしの勤務先からも少し前に『ショッピングモールの法哲学』という本を出しております。カバー写真が、妙に朝日新聞の記事に載っている写真と似ている気がするのはあたしだけでしょうか?