「でもわたしのことも愛してくれるのよね?」と少女は訊いた。「まさにそれこそがぼくのやることだよ」と少年は言った。

<エクス・リブリス>の最新刊、『生まれるためのガイドブック』読了。既にFacebook似書きましたが、とりあえず女子高生に読んでもらいたいです。

タイトルには「生まれるための」とありますが、本書全体読むと生まれることだけでなく、死ぬこと、生きること、誰かと生きていくこと、そういったものの意味を考えさせる内容を含んだ短篇集です。ただし、行くrことや人を愛することの喜びを描くのではなく、むしろのその逆。難しさ、辛さ、苦しさ、そういったものを抱きながら、それでも前へ進まなければいけない人の心、前へ進んでいる人の状況を描いた作品です。

いろいろなマタニティーブルーの世界と言ってしまうと、ちょっと違うのはわかっていますが、生まれるってどういうこと、新しい生命を生むってどういうこと、そして生があるなら死があるわけで、死とは何か、喪失感とはどうやって乗り越えるのか、そんな人の命をかけがえのなさをさまざまなストーリーで描いていると言えばよいのでしょうか?

さて、現代の医学では、どんなに頑張っても子供を産むのは女性です。ですから本書の読者としてはまずもって女性だと思います。しかし本作では男性も悩み苦しみ葛藤しています。本書を男性が読めば女性の悩みに思いを致すことができると思いますし、女性が本作を読めば男性の苦しみに気づくことができるのではないでしょうか?

収録作は、それぞれかなり異なります。正直に言ってしまうと、最後の「支流」が今一つ理解しづらい、否、あたしの読解力では理解できていません。手がいくつも生えてくるというのは何を象徴しているのか、まだ飲み込めずにいます。それ以外の作品は、上に述べたように、どれもしみじみと生きるということ、命の重さと儚さを考えさせる、バラエティ豊かな作品群です。恐らく誰もが、作品の中の一つには思い当たるところがある、お気に入りの一編を見つけ出せるのではないかという気がします。

なお、このダイアリーのタイトルは「老いも若きも」からの一節です。