乃木ホラー

午後には突然の土砂降りになった東京ですが、今日からの盆休み、初日は自宅でのんびりと映画鑑賞です。視たのは「死の実況中継 劇場版」「デスブログ 劇場版」「杉沢村都市伝説 劇場版」の三作品。いずれも乃木坂46のメンバーが主演のホラー映画です。ただし、三つ目の伊藤寧々は既に卒業していますので、現時点ではメンバーではありませんが。

  

まずは「死の実況中継」から。

能條愛未扮する主人公は大学出映画サークルに入り、ホラー映画を撮ることになりました。が、彼女は乗り気ではありません。そもそもサークルに入ったのも高校以来思いを寄せている先輩と近づきたかったからという、かなりうぶな設定です。その一方、彼女は高校時代にイジメに遭っていて、そんな中、ただ一人味方になってくれた友達が自分の代わりにイジメの標的とされ自殺未遂を起こしたことがトラウマとなっていて、今もその友達と一緒に暮らしている(ルームシェア?)という状況。

そんな中、赤い服を着て、貞子のように長い髪に顔を隠した女性が包丁を持って襲ってくるという死の実況中継サイトに自分が映っているの発見します。ところがそれは最近大学の友達との時間が増えて、自分との時間が少なくなったことに嫉妬した、例の自殺未遂のルームメイトの悪ふざけだったのです。

が、悪ふざけだと思った刹那、もう一人、赤い服を着て包丁を握りしめる女が現われます。助けに来てくれた憧れの先輩もその女の手にかかり、やはり助けに駆けつけた大学のサークルの友人、ルームメイト、そして主人公の三人で逃げまくり、最後はその女をビルの屋上から突き落としてジ・エンド。

が、いまひとつストーリーが飲み込めません。あたしは最後まで嫉妬に駆られたルームメイトの気持ちが赤い服の女となって現われた、つまり生き霊という設定なのかと思っていました。だからこそ、最後のシーンで赤い女が突き落とされるのとほぼ同時にルームメイトも命を亡くすのだと思っていたのです。二人がそれほどの依存関係にあったことは作品中でも触れられていましたから。ところがルームメイトの抱きしめて泣いている主人公の背後に、突き落とされた死んだはずの赤い服の女が映ります。それでエンディングです。やはり赤い服の女は実在(?)していて、ルームメイトの嫉妬心などとは無関係の存在だったのでしょうか? だったら、なんで執拗に主人公を狙うのか?

続きまして「デスブログ」です。主演は中田花奈です。

ちょっとオクテではありますが平凡な高校生活を送っていた主人公ですが、密かに憧れていた先輩から告白され有頂天に。そんな日常を綴っていたブログに、田中と名乗る人物がコメントつけてくれました。最初は喜んでいた主人公ですが、ブログに登場した人物が次々と通り魔に襲われ、重症を負ったり死亡したりします。もちろんブログ上では姓名などは出さず、イニシャルで書いているのに、です。そして田中と名乗る人物のコメントは、さも自分が犯人であるかのような書きぶり。

さあ、ここから後半戦。主人公は自分がストーカーされていると思い込み、だんだんと精神の均衡を失っていき、体調もボロボロになっていきます。心配してくれる友達のことも信じられなくなり、そんな思いをブログに書いてしまうと、案の定、その友達が通り魔に襲われます。そして最後は、妹まで襲われ(ただし、妹はブログには登場させていません)、主人公は無残にも殺された妹を抱きしめ泣きじゃくり、茫然自失の体で街を彷徨いへたり込んだところでジ・エンド。

この作品は、突っ込みどころが満載です。まずは妹と二人暮らしなのか、両親が死んだのか海外赴任中なのかわかりませんが、とにかく主人公と妹が住む部屋に両親の影がまるで見えない不自然さ。次に、そりゃ得体の知れないストーカーの恐怖でしょうが、だったらなおさら警察などしかるべきところへ相談に行くべきなのに、主人公はそれもしない。もちろん精神が崩壊しているのに、精神科へ行くようなこともないです。あくまで自分が正常で、周囲がおかしいと思い込んでいる始末。最後に妹が惨殺されたのに、そして殺された直後だということはわかる状況なのに、救急車を呼ぼうとしないでただ泣くだけ。確かに愛する家族を奪われたら気が動転してしまうのは理解できますが、発見した時点ですぐに救急車を呼んでいたら一命を取り留めることは可能だったのではないかと思われます。

以上のような、常識で考えておかしなところが満載の作品ですが、結局、コメントを残していた田中という人物は誰なのか、足して田中が通り魔なのか、そういった謎は謎のまま残る作品で、これは反則ではないでしょうか? 「死の実況中継」の方も謎が残っていると書きましたが、屋上から突き落とされても死なないようですから、これは完全な化け物と見なしてよいでしょう。それに対して、こちらの作品の通り魔はまるでわからないままです。あるいは主人公が二重人格的な存在で、もう一人の自分が犯罪を犯しているというのであれば、やたらと主人公の周囲の人間関係に詳しいことも納得できますが、作品中にそういう可能性を見いだすことはできません。消化不良感ばかりが残る作品です。

そして最後は「杉沢村都市伝説」です。主演は上述の伊藤寧々です。

主人公の兄が友人二人と杉沢村伝説を追いかけていて、三人でそんなウェブサイトも作ったりしています。そしていつもようにな取材旅行に行っていたはずが、仲間の一人が突然主人公のところへ現われ、兄が待っていると告げ、姿を消してしまいます。主人公と兄の恋人の二人は、その仲間が残していったリュックの中の資料を頼りに、兄たちが向かったと思われる杉沢村へと向かいます。途中、今は使われてなさそうなトンネルに入っていくと襲われてしまい、気づくと二人は手足を縛られて、とある民家の座敷にいました。縄をほどき、ここがどこなのか思案していると押し入れの中に隠れていた兄と再会。そして三人で逃げようとするのですが、何者かに襲われ、兄の恋人は絶命。何とか妹だけでも助けようと兄は必死に村の外れまで妹を連れて行きます。妹が村の境となっている鳥居をくぐり振り向くと兄の姿はなく、妹は途方に暮れてジ・エンド。

三作品の中ではこの作品が一番よくできていると思います。つまりは異界、迷宮に入り込んでしまったわけですよね。サイレントヒルのよう、と言えばわかるでしょうか?

 

その異界の村(ここが杉沢村なのか否かは最後まで不明)では、毎夜殺人鬼が村人を殺し回っているらしいのですが、その殺人鬼、まるで「八つ墓村」の三十二人殺しの犯人のようです。これは怖いというよりも笑ってしまいます。