13億人の野望

まだ刊行前の商品『ネオ・チャイナ』をちょこっと読み始めました。

副題に「富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望」とあるように現代中国ノンフィクションです。この分野、競合商品は数え切れないほどあります。文庫・新書のように安くて手軽なものから、かなり本格的で値段もそれなりにするものまで。そして、中国に関する本はかなり極端に奔るところがあり、中国を徹底的に貶めるような本もあれば、太鼓持ちのように礼讃する本もあります。

そんな本があふれているからなのか、日本で出版される現代中国ノンフィクションは、ほぼすべてと言ってもよいのですが、「まえがき」や「あとがき」に「どの本も中国の一面しかとらえていないので、自分が少しでもそんな歪みを是正したくてこの本を書いた」と書かれています。日本人の著作にこの傾向は多いです。中国人が書いたものの場合、特に日本に暮らし、それなりに日本語が達者な中国人のものは、徹底的に中国を悪し様に言うものが多いものです。やはり、日本と中国、あまりにも近すぎるために冷静な言説が成り立ちにくいのでしょうか?

その点、本書のように欧米の人のルポは、そういった日中のしがらみとは無縁ですし、積もりに積もった歴史的な軋轢もありませんし、なにより加害者と被害者という先の大戦のわだかまりがありませんから、日本人の著作に比べて非常にドライな印象があります。本書にもそういったところを期待したいです。

ソ連崩壊後、中国の指導者はその過程を研究し、決して同じ運命をたどるまいと決意した。二〇一一年にアラブの独裁体制が倒されたときにも、中国の体制は耐え抜くことができた。生き延びるために中国共産党がしたのは、聖典を捨て去る一方で聖者への信奉は堅持することだった。すなわち、マルクス主義理論を放棄する一方で、天安門から広場を見下ろす毛沢東の肖像画はそのままにしたのである。(P.13)

こんなところ、面白い言い回しだなあと思います。