ヴァイマル共和国と平成日本

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というわけで『第二次世界大戦1939-45(上)』を読み始めました。

なにせ分厚い本なので、それに上中下の三巻ですから、感想は追々ゆっくりと書くとして、早速冒頭部分から気になったところが……

こののちドイツの犠牲となっていく諸国民にとって悲劇だったのは、しかるべき敬意と秩序を心から欲するドイツ国民が、史上最も性急かつ考えの足りない犯罪者に、国政を左右できるだけのまとまった支持を与え、全身全霊で入れあげ、つき従ったことである。(P.18)

これはもちろんヒトラーが政権を掌握する過程を語ったものです。が、なんとなく昨今の日本の状況に似ているように感じられませんか? 当時のドイツ、つまり第一世界大戦敗戦後のドイツはヴァイマル共和国として、たぶん一般的な世界史の知識では、最も民主的な国になったかのような印象を与えています。

しかし当時のドイツは、敗戦の屈辱だけではなく、ドイツ人の尊厳を踏みにじられた、戦勝国によっていいように戦後秩序が作られてしまった、という被害者意識が強かったようです。その上、不景気、世界恐慌が追い打ちをかけ、「すべてはヴェルサイユ条約がいけなかったんだ」といった方向に傾いていってしまいます。

と、第二次世界大戦に至る過程の、そんな記述を呼んでいると、「あれ、東京裁判に強い憤りを感じ、戦勝国による勝手な断罪だ」と主張して、そんな戦後秩序を打ち壊そうとしている、現在の日本、いや正確に言うなれば安倍政権と二重写しに見えてしまうのはあたしだけでしょうか?

ドイツは、第一次世界大戦で敗れ、そのルサンチマンをなんとかするために再び軍備を拡大し、第二次世界大戦にも敗れ、ようやく己の非を悟ったと言えます。省みて日本は、まだ第二次世界大戦に敗れただけです。経過した年数こそ長いですが、敗戦後の秩序に不満を抱き、あわよくばそれをひっくり返そうともくろむ勢力がじわじわと台頭している。

うーん、やっぱり似ている。なら、どうするべきか?

やはり、歴史に学ぶべきではないでしょうか? そんな国の状況下、ヒトラーはいかにして権力を掌握したのか、それを吟味することによって、平成日本に第二のヒトラーを生み出さないための処方箋が見出せるのではないでしょうか?

天の配剤か、タイミングよく、あたしの勤務先から『独裁者は30日で生まれた』なんて本が刊行されたところです。