ロシアで行なわれた対独戦勝70周年の式典。ロシアのクリミア侵攻に抗議して西欧諸国は軒並み参加を見送り、中露の蜜月ぶりばかりがクローズアップされた今回の式典でした。新聞などの論調では新たな東西冷戦という表現も見れますが、新たなどころか、クリミア戦争以来の構図という思いがします。
自社本の宣伝で恐縮ですが、『クリミア戦争』を読んでいると、とにかくヨーロッパ諸国はロシアが嫌いなんだということがわかります。クリミア戦争の時代には、民主化の進んだ近代国民国家・西欧に対し、後れた封建体制の野蛮な国・帝政ロシアという意識が強かったわけですが、たぶん現在はプーチンを帝政ロシア時代のツァーリに重ね合わせ、やはりロシアは野蛮な後れた国だという意識になっているのだと思います。今も昔もロシアはヨーロッパではない、自分たちとは価値観を共有できない国、そんな根強い不信感があるようです。
今回は対独の式典に中国の習近平がロシアを訪問しましたが、恐らく夏には対日の式典が中国で行なわれ、それにプーチンが来るのではないでしょうか? 両国ともファシズム戦争に協力して戦い勝利した偉大な歴史を声高に訴えていますね。それはそれでよいとして、この数年来、中露両国ともトップの権力がますます強くなり、強権政治が復活していると言われています。マスコミや民主運動に対する締め付け、統制も厳しくなっているそうです。それに対抗するように日本もマスコミへの締め付けが厳しくなっているなんて、まるで「歴史は繰り返す」の言葉どおりです。
中露の会談で、多分に日本を意識しているのでしょうが、歴史を直視するようにという声明があったそうですが、先の大戦はともかくとして、その後の歴史、両国は自国民にきちんと知らしめているのでしょうか? 中国の文革とか天安門事件とか、マスコミが取り上げることさえタブーのような状態で歴史を直視しろと言われても片腹痛いと感じる日本人は多いのではないでしょうか?
と、そんな風に対立を煽るような感じになっていっては、人は何のために歴史から学ぶのかわかりません。ここは心を落ち着けて『クリミア戦争』でも読んでみてください。戦争をやりたがった政治家や、それを支持した国民の当時の熱狂ぶり、頭に血が上っているときの見境のなさはおくとして、戦地での悲惨さを知れば知るほど戦争は起こさない方がよいということがわかると思います。
本書から、戦争は悲惨だという教訓をくみ取るか、やはり一戦交えないと溜飲は下がらないと思うのか……