100分では物足りない荘子

紀伊國屋書店新宿本店の3階、人文書コーナーで、明治書院さんのフェア「四書から始める中国思想」をやっていました。あっ、フェアのタイトルが間違っていたらゴメンナサイ、メモしてこなかったのでうろ覚えです(汗)。

それでも、ずらりと並んだ新釈漢文大系は圧巻です。それと共に新書漢文大系も並んでいます。中国学を学んだ者の端くれとして新編漢文選が並んでいないのが残念ですが、まあ、軽く指摘するに留めておきましょう。

このような漢文大系、あたしが学生のころはこの明治書院の大系の他に、冨山房の「漢文大系」、集英社の「全釈漢文大系」、明徳出版社の「中国古典新書」、角川書店の「鑑賞 中国の古典」、平凡社の「中国古典文学大系」などがありました。その当時、既に古本でしか手に入りませんでしたが、「国訳漢文大成」「漢籍国字解全書」といったシリーズもありました。各シリーズはそれぞれ一長一短、論語や老子、孫子のようにほとんどのシリーズに収録されている作品もあれば、あるシリーズにしか収録されていない古典もあります。複数のシリーズに収録されている場合には、比較検討して選んでいましたので、シリーズを使い分けていたわけです。

閑話休題。

紀伊國屋書店のフェアです。このフェアに興味を持つ方に今さら「四書とは」なんて講義をする必要はないでしょうが、今回の場合、NHKの「100分de名著」が『荘子』を取り上げているので、あえて「四書」ではなく、荘子などを手に取ってもらうのもよいかも知れません。

その「荘子」ですが、翻訳は数多くあります。まず上掲のシリーズにはどれにも「荘子」が入っている(いた)はずです。でも、現在であれば一般的でお手軽なのは文庫でしょうか? まずは岩波文庫から。

   

中国古典を読むといったら、まずは岩波文庫を探すのが王道ですね。ついで、中公はクラシックス。

 

ちなみに中公新書にこんなのもあります。

次に朝日文庫ですが、もうほとんど在庫が残っていないのでしょうか? 朝日新聞出版のサイトでも品切れとなっている巻があります。残念です。

上掲の朝日文庫は全部で4巻か5巻、出ていたはずです。次に講談社学術文庫ですと

 

になりますが、同文庫にはこんな本もあります。

 

ちくま学芸文庫ですとこちらになります。

  

徳間文庫にも「荘子」はあります。

これは全訳ではなく抄訳ですが、とりあえずエッセンスだけ読んでみるのであれば、このくらいでも十分かと思います。そもそも『荘子』は『老子』ほど短くはないので、文庫本では一冊で収まりません。一冊になっているのは全訳ではなくほぼ抄訳だと考えて間違いありません。他にも

 

などがありますので、お好きなものを選べばよいと思います。

「どれがお薦めですか?」と聞かれるのが一番難しいです。たとえば、これが中国思想をこれから学ぼうという大学一年生に聞かれた場合と、「100分de名著」で興味を持ったのでちょっと読んでみたくて、という方とでは薦める本も変わってきますから。

もし紀伊國屋書店やジュンク堂書店のような大きな書店で、ここに挙げたような『荘子』が軒並み揃っている書店、あるいは図書館に行かれたなら、同じ篇や章を読み比べてみて、どれが一番自分にしっくりくるか、それで選べばよいと思います。また荘子その人や周辺情報にも興味があるのであれば、解説などにページを比較的多く割いているものがよいでしょう。

あと『荘子』に限らず、この手の中国古典の現代語訳は原文が載っているか、書き下し文(いわゆる訓読)が載っているか、日本語訳だけなのか、そういった違いも考慮すべきだと思います。いずれにせよ、とても100分では味わい尽くせない、とは言いませんが、100分で終わらせてしまうにはもったいない古典です。