イメージ喚起

いよいよ明日配本の『歩道橋の魔術師』は台湾の呉明益の作品です。

「アジアものはちょっとなあ」と思いの方、確かに欧米のものとは異なったタイプの作品ではあります。大して読んでいないド素人のあたしの感覚では、欧米の作品はカラッとしていて、アジアの作品はジトッとしている、そんな印象があります。何て言うのでしょう、アジアって一部の国を除くと独立を果たしてまだ100年もたっていない国が多く、それはつまり「苦難の道のり」が各国それぞれにまだ生々しく残っていて、文学もそれを抜きには語れない、という面があるからではないか、そんな風に思います。

そういう意味では東欧もそういった感じを受けなくもないですし、共産主義の苦難の道のりがあった国々が多いですよね。ただ、アジアと東欧はやはりちょっと違っていて、これもド素人感覚ですが、東欧の場合はジトッとではなく、ジメッとしていると言えばよいのか、うまく言えませんが、アジアは熱帯や亜熱帯のスコールのような湿度、東欧は霧に覆われたような大気の湿度の高さ、といった感じです。わかっていただけましたでしょうか?

さて『歩道橋の魔術師』です。

この作品は取り立てて「台湾苦難の近現代史」を描いている作品ではありません。描かれている時代は1970年代、80年代の台北ですのでちょっと前の時代です。強引に日本に置き換えるとするなら、昭和30年代、40年代くらい、いわゆる「三丁目の夕日」的な、ちょっとノスタルジーを感じさせる時代です。著者もそんな少年のころの追憶をもって本作を描いていると思われます。ですので、これは既に書きましたが、あたしが読んだ本で言えば、『花まんま』などの朱川湊人の一連の作品に通じるなあ、と感じました。彼の作品が好きな人には面白く読めると思います。

そして、もう少し作品に親しんでもらいたいと思い、舞台になっている中華商場(既に取り壊され、現在の台北には残っていません)をググってみますと、画像などが結構ヒットするものです。動画もあり、既に以下のようなものを紹介しました。

しかし、これ以外にも中華商場の動画ってあるようなので、以下に並べてみます。

下の動画は中華商場取り壊しの時のものでしょうか?

著者・呉明益の動画もありました。