甲乙つけがたい?

休暇をとりました。そして東京国立博物館へ「インドの仏」展を見に行きました。

基本的には仏像ばかりが並んでいる展覧会です。多少なりとも混雑していたのは最初の部屋だけで、あとはゆっくり、ゆったりと鑑賞することができました。一口に仏像と言っても、こうして見るとかなりいろいろあるものです。まず目につくのは顔立ちです。以前から知っていたガンダーラなどの仏像は日本などの仏像とはかなり異なり、顔も欧米人的な作りです。頭部も螺髪ではなくウェーブのかかった長髪だったりしているものもあります。

サイトで紹介されているものにはありませんが、あたしが個人的に気に入ったのは実は仏像ではなくて「NO.86 銀鉢」です。これは実にきれいな逸品です。彫刻も精緻で見事なものです。「NO.87」と大小でセットになって展示されていましたが、どちらもすばらしいものでした。

あとは「NO.84 仏座像」が独特の顔立ちをした仏像なんですが、これがどう見てもあたしには仏像には見えません。むしろ仏教側から排斥された悪魔、邪神、異教の神なのではないかと思われます。こんなのが出土したら、たぶん仏像ではなく悪魔像だと思ってしまいそうですし、少なくとも仏教徒は何ら関係のない、異教の法具ではないかと思ってしまうでしょう。

ところで、この「インドの仏」展は東博の表慶館(正門を入って本館の左側にある小振りの建物)が会場だったので、一階と二階を合わせてもそれほど大きなスペースではありません。そしてすべてを見て終わった最後のコーナーが図録や記念グッズの販売ゾーンとなっていました。今回の展覧会に合わせて企画されたグッズがいろいろ並んでいて、あたしも買いたいものがあったのですが、本館のミュージアムショップではにわの靴下を買おうと思っていたので、ここでは買い物は我慢して本館へ向かいました。

ところが、本館のミュージアムショップは同展の図録こそ売っていたものの、他のグッズは扱っていないのです。絆創膏は要りませんが、一筆箋とかキャンディーは買いたかったなあ、と思いましたが後の祭り。もちろん、目と鼻の先の表慶館へ戻ればよいのでしょうが、一度本館に来てしまったら、また戻るのは面倒に感じてしまい、結局買わずじまいでした。

多くの展覧会では、展覧会グッズの他に関連書籍とかレプリカなどのショップも出店していたりします。そういうのまで本館のミュージアムショップで扱う必要はないと思いますが、展覧会グッズ、それも公式のものであれば本巻でも扱ってくれないかな、そんなことを思いました。

ちなみに、本館のショップで買いたかった靴下は子供用はともかく、大人用でも23~25センチなので、ちょっと小さいかなと考えて、いったん保留としました。こんなことならお土産は表慶館で買っておくべきでした(涙)。

さて表慶館は上にも書いたようにそれほど広くはないので、何時間も観覧に時間がかかるわけではありません。朝イチで入館したのでまだ今日の時間はたっぷりあります。ただ午後イチで別件、髪を切りに行く予約を入れてあったので、それまでの時間でこんどは六本木は東京ミッドタウンにあるサントリー美術館へ「若冲と蕪村」展を見に行きました。

伊藤若冲と与謝蕪村が同い年だなんて知りませんでしたが、非常に面白い展示でした。ちなみにこの展覧会は「きもの割」と言って着物(和服)を着ていくと入場料が100円安くなるサービスがあるようで、会場には着物姿の女性がとても多かったです。そして先の東博に比べ、平日の午前中だというのに、かなり混んでいました。まあ展示を見られないほどの混雑ではありませんでしたが。

さて、若冲と蕪村です。名前を伏せて、今回出品された作品をランダムに出された、それが若冲の作か蕪村の作か、半分くらいは誰にでも判定がつくほど二人の作品は対照的です。一見して感じるのは力強いく画面にグイグイ引き込まれそうになるのは若冲の作品です。それに比べると蕪村の作品はもう少し肩の力が抜けている感じです。画面に引き込まれると言うよりは、ちょっと画面から離れて、引き気味に鑑賞したくなる作品だと感じます。

とはいえ、そんな風に感じられる作品ばかりではなく、これは若冲だろうと思った作品が蕪村のだったり、逆にこのタッチは蕪村だなと思ったら若冲だったり、いくつもあたしの予想を裏切られるものがありました。別に当てっこクイズをしているわけではありませんが、そんな楽しみ方もできるな、と思います。

で、若冲と蕪村。あたしはやはり蕪村の方が好きだなと感じます。若冲も好きですし、すごいと思いますし、圧倒されますが、やはり蕪村のホッとできる感じに惹かれます。蕪村と言えば、今回は出ていませんが「奥の細道屏風」のイメージが強く(本展では「野ざらし紀行屏風」が出展)、飄々とした軽妙洒脱な感じを抱いていますが、やはり若冲の瞬きを許さないかのような力強さよりは、こういう感じのものが好きなんですよね。

しかし、どっちもどっち。甲乙つけがたい展覧会でした。混雑するのもわかります。