自然と遠距離恋愛

アンソロジーもの第三弾、こんどは『本屋さんのアンソロジー』を読んでいます。

この中の「彼女のいたカフェ」は設定としては池袋のジュンク堂書店を舞台としている感じで、そこの喫茶コーナーでアルバイトとして働いていた女の子が書籍売り場に異動願いを出し、数年後には正社員になり、大阪店、福岡店、新潟店と転勤を繰り返し、三十過ぎくらいでまた池袋に戻ってくるというストーリーです。この支店のある場所がまさしくジュンク堂という感じです(笑)。

が、あたしが注目したのはそんなところではありません。同書195ページあたりからのくだりです。主人公が新潟店勤務になっているときの描写です。大阪、福岡と数年ずつ渡り歩いてきたので、池袋店を離れてだいぶたつ主人公ですが、この新潟で池袋時代に顔なじみだった出版社の営業マンと再会するのです。営業マンはもちろん新潟地区担当。

その再会をきっかけに、彼が新潟にきたときは二人で食事にいくようにもなった。(P.195)

うーん、食事くらいなら、まあ、時にあるかな(?)とは思います。しかし、さらに

彼とは、ごく自然と付き合うようになった。(P.196)

という展開には「ちょっと、ちょっと」と言いたくなります。

定期的に出張でくる営業マンと恋仲になるなんて、そう簡単なもの、自然なものなのでしょうか? そんなんだったら、あたしだってこんなに苦労しないわよ! それともこの作品の中の営業マンは毎月のように来ていたのでしょうか?

しかし、来るたびに食事に誘うって、書店員さんだって遅番の日もあれば、忙しいときもあるでしょうから、そんなにしょっちゅう誘っては迷惑になるのではないでしょうか? あたしなんか、そう考えちゃいますね。だからいけないのでしょうか?

相手に好意を持っていれば、忙しくたって断わらないし、なんとか時間を作ってくれる、そんなものなのでしょうか? だとしたら、あたしなんか絶対無理だわ。忙しくなくても、理由をつけて断わられそうだもの。