一見似ている両書のこの違い!

講談社現代新書『中国共産党の経済政策』を読み終わりました。著者はついこの前まで中国の日本大使館に勤務していた経済のスペシャリストです。中国モノの本と言えば、政治権力を巡る暗闘、闘争を中心に、中国は崩壊する、あるいはさらに強大になるということを主題としたものが多いですが、この本はそういった権力闘争からは一歩も二歩も距離をおいています。ですので、読んでいても、読み終わってからも、とても新鮮な感じがします。

純粋に経済や金融の観点から中国を見るとこんな風に分析できるんだ、ということがわかりますが、経済に詳しくないと用語や分析手法の点でやや難しいかもしれません。もちろん、中国という国は経済論理で動くような単純な国ではなく、権力闘争次第では経済的な得失を無視したダイナミックな動きだって起こりうるのだ、という意見もあるかと思います。でも、著者たちの述べることは、過去の流れを踏まえていますので、やはり説得力を感じます。

これまでの中国モノとは一線を画す書籍と言えるのではないでしょうか? で、それを読み終わって現在は日経プレミアシリーズの『中国台頭の終焉』を読み始めました。

こちらの本も、著者はやはり日本大使館に勤務していた経済の専門家です。前者よりも一世代年上になります。内容は、まだ最初の方だけしか読んでいませんが、前者と同様、権力闘争などには目もくれず、という言い方をしたら語弊があるかもしれませんが、経済的な諸現象とデータを追って記述されていて、この点は全く同じ立ち位置ではないかと思われます。

ところがこの両書、言っていることがまるで違います。前者は中国経済は思ったほど落ち込むことはなく、まだまだ成長の余地は残っている、むしろ日本にとっては中国の成長がビジネスチャンスであり、日本のさらなる成長の鍵になるわけだから、中国が発展するように手を貸し、日本も十分利益を得よう、という主張です。

それに対して後者は、中国の経済的崩壊は既に始まっている、そのリスクを日本は真剣に考えないといけないという主張のようです。同じようなテーマを同じようなデータを使って述べているのに、どうしてこうも極端に結論が異なるのでしょうか? 不思議です。どなたかわかりやすく解説して欲しいものです。