今も連綿と生き続けるルサンチマン

アジア再興 帝国主義に挑んだ志士たち』読了。

本書に出てくる主役三人、アフガーニー、梁啓超、タゴールの名前をどのくらいの日本人が知っているでしょうか? さすがにタゴールはノーベル文学賞受賞者なので知名度も高いと思いますが、他の二人はどうでしょう?

本書はそんな、日本ではあまり知られていない人物にスポット当てた本ですが、本書の中にももっとたくさんの知られていない人物が出てきます。でも、個々の人物を知ることが本書のポイントではありません。むしろ時代精神を言ったものを感じることの方が大事なのではないでしょうか。

舞台となる時代は帝国主義時代です。当時のアジアはヨーロッパ諸国の植民地として搾取と貧困にあえいでいました。そんな状況を打破すべく、アジア各国の知識人たちは何を考え、どう行動したのか。当然のことながら、ヨーロッパ諸国が作った直ミンチ政府に仕え、西洋流の思想に触れ、それに感化されていった者もいましたし、ナショナリズムに目覚めた者もいました。自国の現状をどう変えていくか、最初は西洋をモデルにしていたものの、すぐにそれではいつまでたっても西洋の搾取から抜け出せないことに気づきますが、ではどうしたらよいのか、その答えは簡単には見つかりません。

そんなアジア諸国に対して、日本は日露戦争で大国ロシアを破り、アジアの国家の気概を西洋に示したヒーローとして当時のアジアの知識人たちの目には映ったようです。彼らの多くが日本にやってきました。しかし、その日本に裏切られ落胆するのも早かったです。確かに著者が言うように、日本のアジア侵攻は西洋からの解放という側面は持っていたものの、結局日本はアジアの裏切り者になってしまったような印象を受けます。

本書は、イスラーム社会にページを割く比率が高いですが、梁啓超を中心とした中国にもかなり紙幅を割いています。中国は非イスラーム社会として独特の歴史を歩むわけですが、昨今の中国の台頭、その国際社会への挑戦、独自の価値観・規準・原則の押しつけなど、そういった行動の根がこういったところにあったのかな、と観じられます。

とにかく、イスラーム諸国も中国も。、おしなべて西洋流の押しつけに反発していたわけですが、100年後の今日も、やはり世界は西洋流の価値観を基準として動いているわけで、このアジア諸国の鬱屈した思いは、そう簡単には消え去りはしないだろうと思います。とにかく、本書は100年前のことを題材としつつも、今のことを考えさせる本だと思います。

2014年12月7日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー