骨壺

またしても、アイドルB級ホラー映画の視聴。今回は「骨壺」です。

AKBやアイドリングのメンバーがメインを張っている映画で、そういう意味ではそれぞれのグループのファンを取り込もうという大人の事情が透けて見える、あざとい映画とも言えます。ちなみに視聴したのは昨日で、いまこのダイアリーを書いている時に、フジテレビで浅見光彦シリーズが再放送されていますが、そのテーマが遺骨、骨壺であるというシンクロが起こっております。

さて話は戻って「骨壺」です。これも原作は山田悠介で、「リアル鬼ごっこ」もそうですが、基本的には謎解きというほどのミステリーや推理ものではなく、ホラーといっても小中学生や怖がりな人なら驚かせることができるだろうというレベルです。ストーリーも、作者は意識的にこういう作品を書いているのでしょうが、かなり荒唐無稽です。

とある惨殺事件で殺された人(女性)の遺骨、と言うより遺灰を食べると呪われて死ぬという都市伝説があり、遺灰を手に入れた主人公の周りで、誤って、あるいは故意に口にした人々が死んでいくというもの。死に方は突然発作が起きて死ぬ、ということですが、必ず死体の一部がなくなっています。それは惨殺された女性のお腹には子供がいて、その女性がせめて子供だけはこの世に生み出させてあげたいという思いを抱いて死んだからであると説明されます。つまり、体のパーツを集めて、もう一つの人間(?)を作り出し、それを自分のお腹の中の子供に見立てるという寸法です。

なんで何人も殺してパーツを集めなければならないのか理解不能ですし、年齢や性別もバラバラな遺体を集めてつなぎ合わせるという無茶なこともしています。何人か人が死んでいき、最後は一連の事件の原因を作ってしまった罪の意識から、主人公も遺灰を飲み、時分が最後のパーツ、頭部の提供者になります。パーツが揃ったところで呪いは消えたのか、いや、そもそもそんなことで呪いが消えるのか、この点は理解できませんし、謎解きもされていません。

そもそもが理解できない設定ですが、せめて呪いの対象は妊娠している女性にのみ向けられる(=嫉妬)とか、赤ん坊ばかりを狙うとかでないと、惨殺された女性の悲哀や悲しみが伝わらないのではないでしょうか? それに、そもそも恨みを抱いて死んだとはいえ、本来恨むべきは自分を惨殺した犯人でしょう。作品中ではその事件は未解決とされています。一連の呪い殺人が真犯人を暴き出す、追い詰めるとか、犯人に復讐するという目的に向かっているわけでもありません。これもまた共感できないところです。

さて、映画だけを見て、原作を読まずに批判してはいけないと思いますが、もしこの作品が山田悠介の原作に忠実なのだとしたら、あまりにもB級作家という気がしてしまいます。もちろん、主たる読者対象たる中学生あたりにターゲットを絞って書いているということを踏まえれば、そういった年頃の子供たちの気持ちを鷲摑みにする、極めて頭のよい作家だとも言えると思います。仕事柄、ヤングアダルト世代の話を聞く機会がしばしばありますが、彼らの好きな作家では山田悠介の名前が頻繁に挙がりますから、やはり作品作りがうまいんだろうなあ、と思うわけです。