「ナンシーはケータイ、持ってないの?」
というセリフは時々言われます。仕事先で聞かれたときはこう答えています。
「うちの会社、社員にケータイ、支給してくれないのよ」
で、たいていの場合、この話題はこれでジ・エンド。不便じゃないか、と言われたりもしますが、今の時代、まだまだケータイが一般的でなかった時代の人が過半を占めているので、「無ければ無いなりに何とかなる」というのが実情です。確かに、今どきの若者のように、いつでもどこでもすぐつながる、というのは便利なようでいてちょっと息苦しいかもしれません。
ただ、あたしのような外回りの営業部門の場合、やはり連絡が取りやすいという利便性もわからなくはないです。それでも、かつては、外へ出てしまったら連絡は付かない、というのが普通であり常識でしたので、それでなんとかみんなやっていたわけですよね。一分一秒を争うようなことなんてなかったとは言いませんが、今みたいにすぐに連絡が取れなければイライラする、なんてこともなかったはずです。
昨今は電話がかかってきて不在の場合、先方も「ケータイ持ってるんだろうから連絡つきませんか?」と言ってくる方もいますね。でも、あたしの勤務先の場合、会社としてケータイを支給していないので、ケータイを持っているかいないか個人任せ、そしてそのケータイに出るか出ないかも個人任せですので、先方の期待に十全に応えられるとは限りません。個人のケータイなら出ようが出まいが会社にとやかく言われる筋合いはありませんからね。
あたしの勤務先を見てみますと、まだまだケータイを持っていない人もいます。全般的に、ネットにしても世間よりは周回遅れ気味な会社でしたので、ケータイも持っていないという人がまだまだいます。ちなみに、あたしは社員の中で誰がケータイを持っていて、誰が持っていないのか、実は正確には把握していませんし、把握しようとも思っていません。持っている人が誰かわかっていないので、当然のことながら、持っている人のケータイ番号やメアドも知りません。知りたいとも思いません。彼らのケータイは、会社で支給したものではないので仕事で使おうという気にはなれないのです。もちろん、プライベートで会社の人と連絡を取り合うということもほぼ皆無なので、やっぱり知る必要を感じないのです。一応、会社の社員名簿を見れば自宅の電話番号はわかりますからね。
では、話は戻って、あたしのケータイです。
あたしはタブレットは使っています。外回りや出張の時、電車を待つ間にメールチェックをしたりするのに使っています。
おいおい、個人所有のケータイを仕事に使いたくないといいながら、タブレットは仕事に使うのか?
と責められそうですが、はい、確かにダブルスタンダードであることは認めます。ただ言い訳をさせてもらえば、タブレットも個人のものですから、メールチェックをしてもスルーすることもあります。メールをチェックしたかしないかはあたし次第です。いえ、わざとスルーするつもりはないのですが、外回りの途次、常に一定の時間感覚でメールチェックができるとは限りません。時には、もう外回りを終えて自宅へ向かう帰路、もうすぐ家に到着という電車やバスの中でチェックするときだってあります。そんなときにメールをチェックをして、午後の早い時間に「すぐ会社に連絡ください」というメールが来ていたとしても、もう詮無いことです。あえてスルーしたのではなく、こういう事態もしょっちゅう起きます。
そして、たぶん、これが一番大きな違いだと思いますが、タブレットは電話としては使えないということです。機種によってはヘッドレストなどを接続して電話機能を使用することができるものもあるのかもしれませんが、少なくともあたしが使っているものにはそんな機能はありません。タブレットも携帯端末の一つですから、機種本体に電話番号は発行されているようです。設定画面を見ると電話番号という項目があります。でも、その番号に電話をかけたらどうなるのでしょうね? あたしのタブレットがブルブル震えるのでしょうか?
というわけで、タブレットの場合、いつでも出なければならない、という束縛感がないのがケータイとの最大の違いではないでしょうか? 昨今「つながり」というのが時代を切り取るキーワードみたいになっていて、そういうタイトルの本も店頭でも見かけますからね。
そんなに他人とつながっていたいのか? あたしなど、そう思ってしまいます。できるだけ他人とは疎遠に、可能な限り表面的なつきあいだけで済ます、それが楽だと思うのですがね。特に仕事上で知り合った人の場合、果たして相手なり自分なりが仕事を辞めた後もつきあいが続くのか……。そう考えると、やはりつながりは最低限度で十分、と思います。別に友達なんか不要だとか、邪魔だとか、そういうことまでを主張したいわけではありませんが。
で、実のところ、あたしもケータイは持っています。いや、ケータイではなくスマホです。ただ、持ち歩いていないこともあります。自宅に置きっ放しになっている日もあります。出張などでは面倒なので、そもそも持って行かないこともよくあります。個人のスマホなので、会社でも特に他の社員に番号を教えたりはしていません。聞かれたときに答えたことがあるので、もしかすると番号を知っている社員が何人かいるかもしれませんが、よくわかっていません。
じゃあ、あたしにも教えてよ、と言われるかも知れませんが、基本的にあたしのスマホは、メールも電話も出られないようにしています。「連絡先」に登録したメアドや番号からしかつながらないように、受信拒否設定をしています。
「なんで、そんなことしてるの? それじゃ使えないじゃない」
と言われそうですが、別に仕事で使うつもりはないので、それで構いません。ですから、登録してあるのは妹と母、それと自宅くらなものです。登録されていないとつながらないので、公衆電話からもかけられません。会社からもダメです。くどいようですが、仕事で使うつもりがないので。プライベートでも友だちがいないので、登録されている人はいないのですが……(汗)
ただ、ごく稀に、数年に一人くらいの割合で、アドレス交換と言いますか、ちょっとした弾みで「連絡先」に登録することがあります。たぶん、交換した直後は数往復のやりとりがあるのでしょう。しかし、2、3ヶ月やりとりがなくなると「連絡先」から削除してしまいます。2、3ヶ月もやりとりをしなければ、もうやりとりすることはほとんどなくなりますので、そんな人まで「連絡先」に登録しておくのは邪魔なのです。
ですから、久しぶりにメールでも送ってみようと相手が思って、実際にあたしにメールを送ったとしても、受信拒否、着信拒否になって送れません、届きません。そもそも、「ケータイの番号を教えて」とか、「ケータイのメアド教えて」と言われて教えてあげるぶんには否とは言いませんが、相手のメアドや番号を「連絡先」にあたしが登録するかどうかは保証の限りではありません。あたしが登録しない限り、あたしにはつながりません。それでは相手に失礼なので、あたしは原則として「ケータイは使ってない」で通しております。
そうなんです。最初のやりとりでもそうですが、あたし、「ケータイを持っていない」とは基本的に言いません。「会社が支給していない」とか、「使っていない」という答え方でのらりくらりとかわしています。