三位一体は?

パシフィコ横浜で行なわれていた図書館総合展人文会でブースを出していたので、あたしも当番で参加しました。そして昨日は人文会主催のシンポジウムもあったので、それも聞きに行きました。

さて、そのシンポジウム、タイトルは「専門書出版社と大学図書館」です。大学図書館とその選書、蔵書に専門出版社の書籍は度のような位置を占めているのか、ということです。出版社側から言えば、大学図書館というのは専門書の非常に大事なお客様で、利用者(読者)と専門書との親和性が非常に高いと考えられます。簡単に言えば、専門書というのは大学の先生や大学の図書館、研究室で買ってもらえるから商売として成り立つ、という面があるわけです。

そんなお得意様である大学図書館ですが、近年は電子書籍の比率が高まってきているようです。予算ベースではその過半を電子書籍や電子雑誌が占めているようですが、たぶん電子ものの価格がまだ高いという事情もあるのではないかと思います。が、それでも時代は紙から電子へと移っている、そういうことはわかりました。なによりも収蔵スペースの問題という物理的な困難が立ちはだかっていますから。

そんな話を聞きながら、出版社の人間として、ここは出版社と大学図書館だけではなく、大学生協(丸善や紀伊國屋書店、三省堂書店など、生協ではない学内書店も含む)も協力して専門書を盛り上げることは出来ないかな、という気がしました。一般に図書館と書店は対立し合うものと言われてきましたが、そんな話は今は昔、ツタヤが運営している図書館ではありませんが、昨今は図書館と書店が協力して、本を読む人を増やすために努力している事例が多くなっています。

だったら、大学という場でも、図書館と書店である生協が協力できることは多分にあるのではないでしょうか? 営業で、各地の大学生協を回っていて感じるのは、年々生協の書籍売り場が縮小されているということです。もちろん元気な書籍売り場も多いですが、一年ぶりに訪れたら三分の二くらいにスペースが減っていたなんてこともざらです。書籍は売れない、儲からないという厳然たる事実の前になすすべもなく縮小して行ってしまっているようです。

でも、大学図書館同様、大学内の書店は非常によいお客さんを抱えているはずです。はっきり言って、街中の書店なんかよりもはるかに本に親しんでいる人たちがお客としているわけですから。特に専門書になればなるほど、街の本屋よりは学内の書店の方が売れる可能性が高いはずです。そんな地の利を活かせないはずはない、と思います。

比較的元気がある生協、頑張っている生協というのは、よくよく観察していると大学の先生方がよく訪れ、本を買っている気がします。先生方がほとんど来ないような生協は学生もほとんど来ません。雑誌を立ち読みし、パンやドリンクを買いに来るのが関の山です。本に目を向けるのは教科書を買うときだけという有り様です。ですから、生協は学生をないがしろにしろとは言いませんが、まずは先生を店舗に呼び込むことを目標にしてみたらどうでしょうか?

そんなとき、大学図書館と協力して何かできないものでしょうか? 図書館で所蔵する貴重な図書を利用して展示フェアをやりつつ、その関連書籍を生協でもフェア展開する、といったことが思い浮かびます。それ以外にも、街の書店と地域の図書館のコラボは最近増えていますから、そんなところにもヒントは転がっているのではないでしょうか?