携帯とはいえ

休みの日の恒例行事と呼んでしまっては、あまりにもあたしの日常が哀しいかもしれませんが、とはいえ、寒い日に出かけるのも嫌ですし、自宅でぼんやり映画鑑賞です。

 

携帯彼氏+(プラス)」と「携帯彼女+(プラス)」の2本です。同じ話の違う立場から見た映画なのかと思っていましたが、それぞれ別の作品でした。ホラーと呼ぶにはあまりにも幼稚なストーリーではありますが、確かにイマドキなテーマであり、シチュエーションだとは覆います。

前者は、女子高生の間で流行っているスマホ・アプリ「家庭教師+(プラス)」に、メーカー純正のアプリとは別のアプリが存在し、それは実は死んだ体罰教師の怨念によって生み出されたものであるという趣向。途中、アドレス帳から友達を選ばせる設問があり、それがこのアプリの伝播の仕方となっていて、そんなところはかつての「着信アリ」的な伝染の仕方に思えますが、「自分が次のターゲットを選んでしまった」という罪悪感を抱かせるところがいっそう罪深い気もしました。

最終的には、合わせ鏡で霊の通り道を作り、それによって邪悪な教師の怨念を追い払い、成功したかに見えてまだダメで、3Dで教師が出現する元となっているARカードを燃やしてしまうことで、その教師を退治するというエンディングです。ARカードを使うなんていうのは、さらにイマドキで、ケータイ(ガラケー)ならできない業、やはりスマホでないと成り立たないアイデアですね。

後者は、同じくスマホ・アプリではありますが、こんどは家庭教師ではなく、バーチャルアイドルの育成です。このアプリのすごいところは、自分のスマホで作り出したアイドルがARカードなしでもスマホ越しに見えるところ、そして、このアプリで他人が作ったアイドルも見えるというところでしょうか。端から見るとアイドルオタクの男子たちがウジャウジャいる場面も、そのスマホ越しに見ると男子一人一人にアイドルが付き添っていうように見えるのは、なんとも不思議というか、気持ちの悪い光景です。

このアプリの場合、主人公のゲームオタクの男子生徒と、中学時代の同級生から突然送りつけられたこのアプリのせいでイライラしているイマドキの女子生徒の、アプリの恐怖を通じて芽生えるほのかな恋模様もストーリーの軸ではあります。この女子生徒役は逢沢りなで、男子生徒のアプリの中野アイドル役は荻野可鈴でした。あくまで映画の中に映るイメージでは現実の女子生徒よりも、バーチャルアイドルの方がかわいかったと感じたのはあたしだけでしょうか?

さて、こちらの映画は、アイドルを育成して点数を稼ぐわけですが、要らなくなったアイドルをスカウトに出す(=捨てる)こともできるというのが、なかなかシュールです。ただし24時間いないに別に人にスカウトされないと、元の主人のところに戻ってきて、さらに点数も減点されるという巧妙さです。点数がゼロになるとプレーヤーは皆自分で首にナイフを突き立てるなどして自殺してしまいます。スマホ越しにはアイドルに殺されるのが見えるのですが、世間からは自殺しているようにしか見えないのです。逆に点数がたまってゲームをクリアすると、バーチャルの世界に行ってしまうようです。この男子生徒と女子生徒も意図したわけではなく、バーチャルの世界に迷い込んでしまいますが、なんとか現実世界との通路を見つけ出し(←これも男子生徒が通常のゲームをやりながらつぶやくセリフにヒントが伏線として隠されています)、無事に戻ってくるのですが、別にそのアプリを壊したとか、バーチャルの世界を潰したというわけではありません。あくまで自分たちだけが逃れてきたというだけのことです。

この両作品、ネット発のさくひんなわけで、非常に底の浅いものです。いかにも中高校生の間で流行りそうな、たわいのない噂話、いわゆる都市伝説的な内容です。いつでも身近に置いておけるという意味では「携帯」というタイトルは正しいのですが、携帯電話という意味で使っているのであれば、既に作品の中でも使われているのはスマホですから、時代はどんどん先へ進んでいることを実感させられます。かといって、「スマホ彼氏」「スマホ彼女」では据わりが悪い気もしますし……