北欧文学が読みたいの?

本日の朝日新聞読書欄に、立教大学で行なわれる北欧ミステリー・フェスの記事が載っていました。北欧というとミステリーなんでしょうか? ほとんどミステリーを読まないあたしにはいまひとつピンと来ないのですが、たぶん、そうなのでしょう。

でも、別にミステリーじゃなくても、フツーに北欧の文学作品を読みたいという人だって大勢いるのではないでしょうか?

あっ、別にミステリーは文学ではないという偏見とか、そういったものを持っているわけではありません。単純に書店の棚構成を見ていると、ミステリーやファンタジーは別に独立した棚になっていることが多いので、これら以外の文学とは読者層とか売れ方とか、かなり異なるのかなあと漠然と感じているだけで、優劣を付けるつもりはありません。

好き嫌いはもちろんあるでしょうが、ミステリーを一括りに好きとか嫌いとか言えませんし、ミステリー以外の文学をまとめて好きとか嫌いとか、そんな風にも言えません。あまりに当たり前な意見ではありますが、作品それぞれだと思います。

閑話休題。

上記のフェスに合わせ、書店でコーナーやフェアをやっているのかどうかは知りません。別に北欧に限らず、意欲的な書店員さんなら、ある月はフランス文学フェア、ある月はラテン文学フェア、といった具合に、そういう取り組みや仕掛けを行なっているものです。もちろん、こういうイベントがあるから、それに絡めてフェアを開催するというのは常道ですので、たぶん都内の書店でも探してみれば北欧ミステリーフェアをやっているところ、更にはもう少し広げて北欧文学フェアとか、あるいは文芸書に留まらず、北欧フェアなんてコーナー作りをしているところもあるのではないかと思います。書店それぞれで、大いに盛り上がってもらいたいと思います。

ところで、上にも書いたように、フツーに北欧の文学が読みたいなあと思った本好きがいたとして、「さて、何を読もうか」と考えたとき、どういう行動を取るでしょうか? 図書館へ行くのでしょうか? でも、かなり大きな図書館でないと、海外文学作品が揃っているとは思えません。未確認ですが、そんな気がします。では、本屋に行くのか? これも図書館以上に、大型の書店でないと、海外文学作品はろくに置いてもいないでしょう。都会に住んでいる人であれば、ちょっと都心部へ出たときに大型書店へ立ち寄れば、海外文学コーナーの一角に「北欧」のコーナーがあるのではないかと思います。

では、そんな都会に住んでいない人はどうするか。ネットで調べるしかないのでしょうか? 昨今は、お年寄りでもPCやスマホを使いこなす時代ですから、田舎の人だから、老人だからといった先入観は捨ててかからないとなりません。では、ネットでどうやって検索するのか?

いきなり、「北欧文学」でググるのでしょうか?

たぶん、そうではなく、多くの人はアマゾンなどのネット書店で検索するのではないでしょうか? で、あたしもやってみました。ただし、検索と言うよりは、もっとオーソドックスな方法です。

アマゾンのトップページに「カテゴリーからさがす」から「本」を選び、さらにその下位ジャンルで「文学・評論」を選択します。さらにその下の分類には「ミステリー」も見えますが、今回は「フツーの文学作品なので「文芸作品」をチョイスします。そうすると、「日本文学」「中国文学」などに並んで「英米文学」「ドイツ文学」などが見えます。よしよし、これで「北欧文学」を選べばよいのか、と探してみても見当たりません。残るは「その他の外国文学」です。

その他ってどこよ、と言いたくなりますが、「アジア文学」や「ラテン文学」はカテゴリーとしてありますから、たぶん北欧や東欧を指すのでしょうね。ちなみに、イランとかイラクあたりの中東文学は「アジア文学」に入るのでしょうか? トルコはどこでしょうね? アフリカだってあるはずなのに……

仕方ありません。「その他の外国文学」を選びます。基本的にカテゴリーをたどっていく方法ではここまでが限度です。これ以上は絞り込めません。「詳細検索」とかを使えばよいのかもしれませんが、とりあえずはカテゴリーをたどっていく方法ではここまでです。この中から北欧のものを探すなんて面倒でやってられませんよね。こっちはただ単に北欧文学にはどんなものがあるかざっと眺め、装丁とかタイトルとかで面白そうなものがあったら読んでみようかな、くらいのつもりでアマゾンのサイトを利用したのに、望むような結果は得られませんでした。

では、アマゾンではなく紀伊國屋書店のサイトならどうでしょうか?

こちらもトップページの「和書」からカテゴリーをたどっていくことにします。「和書」→「文芸」→「海外文学」→「その他ヨーロッパ文学」と、ここまでしかたどれません。やはり出版されている邦訳の点数、そもそもの人気(需要?)に差があるとはいえ、北欧だけを取り出すことはできないようです。

他のサイトもついでに調べてみました。丸善&ジュンク堂書店のサイトはこういったカテゴリーをたどっていくことはできないようです。楽天ブックスのサイトは、「本」→「小説・エッセイ」→「外国の小説」までしかたどれません。セブンネットショッピングだと、「文芸」→「海外文学」→「他ヨーロッパ文学」までです。

こういうとき、ネットで意外と使えないと思います。こういう場合の検索がうまくなるためには、また別なスキルが必要になるようです。それはそれで読者にはハードルが高いのではないかと思います。

やはり、こういう時はリアル書店ではないでしょうか? 上で、大型書店でないと海外文学はほとんど置いていない、と書きました。それはそれで正しいのですが、それでも少しでも海外文学を置いている書店であれば、「英米」「フランス」「ラテン」「中国」といったプレートが棚に表示されているのではないでしょうか? ネットでは検索の便を考え、そのカテゴリーに含まれる商品が少ない場合、わざわざカテゴリーを立てることをしないのかもしれません。でもリアル書店であれば、たとえ一冊か二冊しかなくても「北欧」とか「東欧」というプレートを立てることは可能です。もしかすると、書店員さんの趣味で、英米やフランス文学に比べ、すいぶんと北欧の占める割合の大きな書店があるかもしれません。

いずれにせよ、リアル書店であれば、それも大型の書店であれば、そういう棚プレートによって「北欧文学」を読みたい人の需要を満たすことは可能です。もちろんネットと同じように「英米」や「フランス」「ドイツ」はあっても、あとは一括りに「その他のヨーロッパ」という棚プレートの書店もあるでしょうけど、気の利いた書店であれば、「その他」の中もプレートこそないものの北欧と東欧はうっすらと分けているはずです。

こんなところが、やはりリアル書店のよいところ、ネット書店に対するアドバンテージではないかと思います。

ちなみに、アマゾンのサイトで、上記のようなやり方で、あたしの専門である中国文学についてたどりますと、「中国文学」の下には西遊記や三国志のような古典文学から、魯迅のような近代文学、そして現代の中国作家の作品まで、すべて一緒くたになって登場します。これはこれで使い勝手のたいそう悪いものではないでしょうか?