クスッとした笑い

ぼくは覚えている』読了。

開くとわかるように、「ぼくは覚えている」で始まる文章を並べた作品です。詩のようにも見えます。確かに詩のように、リズミカルに読めるところもあります。でもすべてを読み終わると、これが作者の学生時代を中心とした自伝的な作品であると思えてきます。否、思えるのではなく、実際のところ、そうなのでしょう。

子供の頃から学生時代にかけての、作者の記憶に残った細々とした事柄が、「ぼくは覚えている」という書き出しの後に、延々と書き綴られます。作者の年齢を反映して、描かれる世界は1950年代が中心のようで、あたしにはちょっとわからないところもあります。また年代の問題だけでなく、あたしがアメリカ文化やアメリカ社会に対して知識が無いことから理解できない項目も多々あります。そして、何と言ってもこれが最大の原因ではないかと思いますが、作者がやはりかなり変わった人物であることによる理解の難しさもあります。確か作者はゲイだったはずです。同性愛の描写も散見されます。

そんな理解の困難さはあるものの、やはりクスッと笑ってしまう項目、うんうん、その感じ、わかる、という描写が全体の多数を占めています。ちょっとエッチな描写など、思春期を通り越してきた世代であれば、誰でも多かれ少なかれこんな経験をしたり、こんな妄想を抱いたりしたことがあるのではないでしょうか?

高校生や大学生が読んだらどんな感想を抱くのか興味深いですが、青春をはるか昔に終えた世代が読んだら、ちょっぴり懐かしく、当時の青臭かった自分を思い出せるのではないでしょうか?