元気を取り戻せるのか?

昨日の紀伊國屋サザンシアターでの、紀伊國屋書店社長・高井昌史氏講演会。紀伊國屋の社長がしゃべるとあって会場は出版社のお偉方もそれなりに顔を揃えた盛況ぶりでした。講演の内容は、たぶん部外秘的な数字・データもあるでしょうからここには書きませんが、講演内容のあらましだけ載せておきます。

1.出版業界の市場動向と紀伊國屋書店の現状
2.読書離れ~本の未来を揺るがすもの
3.出版業界の問題
-ネット書店・公共図書館・新古書店・万引き問題・電子書籍(消費税問題)他
4.再販制について
5.正味改善について
-日販「パートナーズ契約」、トーハン「アライアンス契約」、計画販売制
6.紀伊國屋書店の取り組み~出版会に元気を取り戻そう

以上です。個々のテーマ自体はそれほど目新しいものではなく、この数年間、否、十数年来言われてきた問題ばかりではないでしょうか。あえて言えばネット書店などの問題が比較的新しい話題と言えるでしょうか?

で、この講演会を聴きに来ていた人たち、それぞれに感じるところ、考えるところがあったと思います。既にそのための施策を行なっている社もあるのではないでしょうか。あたしも講演を聴きながら、足りない知恵で考えたことを備忘録代わりに書き留めておこうと思います。

まず、図書館です。

図書館からの注文、個々の図書館や出入りの書店、TRCなどからの注文ですが、出版社からするとほぼ返品のない注文なので実は非常にありがたいものです。全国の図書館、公立から学校図書館まですべて合わせると数千から万近くあると思いますが、もしその図書館すべてが一冊ずつ購入してくれたなら、専門書出版社など初版の部数が飛躍的に大きくなり、定価もグッと下げることが出来るでしょう。

ただ専門書を入れられる図書館は限られていますので、そんなにうまくいきませんし、いま図書館のことで問題となっているのは複本のことでしょう。ベストセラーですと、一つの図書館で数冊はおろか十数冊、あるいは数十冊も購入していることがあるそうです。人びとの税金で運営されている公共図書館の場合、利用者の希望を叶えるのはもっともではありますが、特定の本だけに予算をつぎ込むのは税金の使い方として問題ないのか、そういう議論もあると思います。

あたし自身は複本よりも、新刊は刊行後半年、ないし3ヶ月は図書館に納入しないという形にすればよいと考えています。映画などDVDの発売は公開から数ヶ月後ですし、CSなどの有料放送での放映も更にその後、地上波での放映となると更に後になります。これは映画公開と同時にテレビで放送されたら映画館に見に来る人が減ってしまうという理由からでしょう。だったら、書籍も地域の書店のことを考え、まずは本屋で買ってもらう、ということを優先してもよいのではないかと、あたしは個人的には考えています。

公共図書館の住民サービスはどうなるんだ、と言われそうですが、「図書館に未来永劫、書籍を納入しない」と言っているのではありませんから、住民サービスを無視していることにはならないと思いますし、数ヶ月のタイムラグは民業を圧迫しないためにも十分賛同を得られるのではないかと思います。

あと、個人的には、文庫・新書は図書館では扱わない、というのも前向きに考えてもよいのではないかと思います。やはり図書館は高くて個人ではなかなか買えない本を揃えるべきであって、文庫や新書は借りるのではなく買ってもらいたいと思います。

あと、再販制については政府でも議論されているようですが、刊行後一定期間を過ぎたら自由価格にするという時限再販は一考の余地ありだと思いますが、そうなると買い切りにするのか、委託のままなのかといった問題も起きてくるでしょう。あと、何年たっても売れているロングセラーの場合、時限再販になじむのか、あたしにはまだよくわかりません。

やはり出版社や書店の経営者の方々は、日々の業務に追われているだけでなく、こういう問題も腰を据えて考えないとならない時代なのでしょうね。とはいえ、この不況では各社そんな余裕はなさそうですが……