赤い人

このところ少しずつ紹介も増えている『オオカミ 迫害から復権へ』では、アメリカ大陸でのオオカミ駆除の歴史についても触れられています。それまでのネイティブアメリカンがオオカミを取り立てて駆除してはいなかったのに対し、ヨーロッパからやってきた白人たちが血眼になってオオカミを狩ったようです。

そんなネイティブアメリカンの記事を読んでいて思いだしたことがありました。あたしの心の中では非常に鮮明に記憶に残っているので改めてここに書いておきたいと思います。

ネイティブアメリカン、いわゆるインディアンです。あたしが子供のころや学生のころには、まだネイティブアメリカンという言い方は日本では人口に膾炙していませんでした。そんな高校時代に受けた英語の模試、長文読解問題のテーマはアメリカの歴史について書かれたものでした。

長文の内容は忘れてしまいましたが、インディアンがかつて「赤い人」と呼ばれていて、それが侮蔑的な意味で使われていた、というようなことが書かれていたと記憶しています。この「赤い人」は文中では「red man」と表記されていました。「r」や「m」が大文字だったかは忘れてしまいましたが、とにかく「レッドマン」と書かれていました。

英語の設問では、この「red man」に下線が引かれ、これは誰を差すのか答えよ、というような問題があり、答えはインディアンだったかネイティブアメリカンだったか、とにかくそれに当たる単語を書けばよかったのです。

ところが、ここにあたしの同級生で同じくこの模試を受けた男子がいました。彼はバリバリの自民党支持者で、共産党を毛嫌いすること甚だしい人でした。その彼は「red man」という単語を見て、「共産主義者」と回答し、見事に×をもらいました。彼曰く、「赤いやつ」といったら共産主義者しかいないと言って譲りません。

いや、この問題文には共産主義の「き」の字すら出てこないよと言っても、アメリカ人が闘った相手という、なんとなく読み取った英語の文章の大意から「アメリカの敵は共産主義」と早合点し、共産主義者を登場させてしまったようなのです。

いま思っても笑ってしまう勘違いですが、彼はその時必死の形相で主張していました。高校卒業後は逢っていませんし、風の便りも聞きませんがどうしているのでしょうね。