距離感が難しい

碧野圭書店ガール 3』読了。『書店ガール』『書店ガール 2』と読んできて第三作目です。

 

今回もジュンク堂とおぼしき書店チェーンが舞台ですが、主役の二人が一緒に活躍する機会は少ないです。かたや東京で育児と仕事との両立に悩み、かたや仙台で震災との関わり方に悩む、そんなシチュエーションです。ストーリー自体は、この手の作品の宿命として、あくまでも前向きに前向きに、頑張れば結果はついてくる、一生懸命さはきっと誰かが見ていてくれる、という応援メッセージ的なもので、これまでと変わりありません。

ただ、読んでいて、今回は三年たった東日本大震災のことが大きなテーマとして取り上げられていて、被災者との距離の取り方が難しいな、という気がしました。この作品に限らず、被災者を扱ったものにはしばしばこの難しさが感じられます。簡単に言ってしまうと、さほど被害を受けていない東京の人間は震災を忘れた方がよいのか、それとももっと東北の人に何かした方がよいのか、そんなこんな。

この作品に出てくる東北の人の声が、すべての声を代表しているとは思いませんが、こちらが何を思い、何を考えても「所詮、お前たち東京の人間にはわかりっこねえ」と言われているような気がします。そう言われてしまうと、こちらもわかるわけはないし、辛い体験なんてわかりたいとも思わない、と言い返したくなります。どう接すればよいのか、それともむしろ接しない方がよいのか、とりあえずは考えてみるしかないのか、そんな風に思います。

さて、もう一つのテーマは育児と仕事です。どうしても夫婦共働きだと女性にしわ寄せが行ってしまう日本社会。この作品でも子育てと主婦業と書店人としての葛藤が描かれています。出版社の編集がみんながみんな毎日のように深夜まで働いているというのは、いくらなんでも極端だと思いますが、ここに描かれている夫(出版社の編集)は、それでもまだマシな方なんでしょうか?

途中までは両立に悩み、本来の自分を見失っていた主人公も後半はしっかりと未来を見据え、本来の自分を取り戻し、自信を持って周りの人を巻き込んでいきます。この後半の周りの人を巻き込んでいく過程、パート3まで来たこのシリーズの醍醐味でもあるわけですが、実はあたしが一番苦手としていることはこれです。ここが読んでいて一番辛いです。やはり読んでいると、登場人物に自分を置き換えて読んでしまうのですが、このところが一番面倒で、うざったく感じます。もちろん大きなフェアとか、企画を遂行するのには周囲の協力は必要ですが、ここまでの熱意ってないですし、出せません。こんな巻き込み型の人が周囲にいたら、こちらが疲れてしまいそうで、たぶん自然と距離を取るようになるだろうな、と思います。

それにしても、この業界のもっとドン底を、そろそろこのシリーズでも描いてもよいのではないかと、そんな気がします。