勉強しないとバカになる

暇を持て余すことはありませんが、時々、つまらない話を1時間か2時間聞かなければならないようなことがあります。大勢の聴衆がいる会場ならば、タブレットで情報収集したり、あるいはこっそり本を読んでいてもバレないでしょう。そういうやって、拷問のような時間をやり過ごすことは多々あります。

そんなときに思い出すのは学生時代です。

大学の授業はほとんどが選択必修で、自分の専攻する分野の授業ばかりでしたから退屈することはありませんでしたが、一年次にはどうしても一般教養の科目を履修する必要があって、それも人文ならまだしも、社会科学や自然科学はまるっきり興味がなかったので退屈きわまりないものでした。

そんなとき、あたしはあることをして時間を潰していました。あたしの学生時代ですから、ノート派祖温も一般的にはなっていませんし、ましてやスマホはおろかタブレットもケータイもなかった時代です。今の若者からすると「それで生きていけるのですか?」と聞かれそうですが、そういうものを知らない時代だったので、なんとでもなったものでした。

で、あたしの時間潰しですが、それは数学の問題を解く、です。

あたしは文系の人間ですが、数学は好きでした。文系の問題と異なり、数学はきっちり答えが出るのが好きで、そこそこ点数も取れる教科でした。なので、大学一年生の暇な講義の授業の時は、ノートの片隅に自分で数学の問題を作って遊んでいました。

どんな問題を作っていたかというと微分積分の問題。ある方程式をX軸を中心に回転させたときにできる立体の体積を求めよ、といった類いの問題を自分で作って解いていました。いま考えると、とんでもない変わり者という気がしますが、当時のあたしはちょうどよい時間潰しとしてしょっちゅうこんなことをしていたものです。

ところが、大学四年間、二年時以降は退屈な講義形式の授業もなく、もっぱら専攻の中国思想に邁進し、大学院修士二年とそればっかりだったので、社会人になって数年こそ、まだ微積分の問題は解けましたが、いまではすっかりできません。何をどうすればよいのかすら思い出せなくなりました。

行列なんてのもありましたよね。あれも今では何が何だかさっぱりです。

そう言えば、あたしは寝起きがよくて、寝ぼけるということがなく、「起きてしばらくはボーッとしている」という状態が理解できない人間なんです。なので、かつては「朝起きた瞬間から因数分解ができる」と豪語していたのですが……

やはり勉強は一日にしてならずであり、一日でも怠るとさび付いてしまうものなんですね。