ホラー、いろいろ

夏以外でもホラー映画というのはスカパー!でやっているもので、B級作品目白押しです。そんな中、比較的メジャーなものを3本見ました。「推理作家ポー 最期の5日間」「ラスト・エクソシズム2 悪魔の寵愛」「クロユリ団地」です。

 

まずは「推理作家ポー」ですが、エドガー・アラン・ポーの死の直前の数日間を描いた作品です。ホラーと言うよりはミステリーですかね。ポーの生涯をよく知らなかったのですが、彼は公園で泥酔状態見つかり、そのまま亡くなったそうですね。いまだにその死因には諸説あるそうですが、本作では彼のフィアンセが誘拐され、その犯人によって毒を飲まされるという「毒殺説」を採用しているようです。

ポーの作品は岩浪文庫で読んだことがあるくらいで詳しいことは知りませんが、熱烈な愛好家なら作品世界を模倣した殺人劇をどう見るのでしょうか。死の直前にこういう連続殺人が史実としてあったのか、晩年のポーにあのような恋人がいたのか、あたしは知りませんので純粋にフィクションとして、サスペンス映画として鑑賞した感想になりますが、実は犯人の動機がよくわかりません。それに一連の犯行によって何をしたかったのか。犯人はポーの愛読者、崇拝者という設定のようですので、酒浸りになって落ちぶれたポーにもう一度傑作を書かせたくてあのような殺人事件を起こしただけなのでしょうか? いまで言うところのストーカー的なファン心理がなせる犯罪だったのでしょうか?

次に「ラスト・エクソシズム」はパート2です。たぶん「パート1」も見ているはずですが、そして鑑賞記もブログに書いたはずなのですが、ちょっと見当たりません。お許しください。

前作で狩ると的なキリスト教の犠牲になりかかった少女が、心を病んだ少女たちが共同で暮らす施設に入所します。最初は何事もなく、悪夢も見なくなり、ホテルでルームメーキングの仕事も始め順調に回復していくかに見えますが、徐々に悪魔の影が忍び寄り、奇怪なことが周囲で起こり始めます。

と、こう書いてしまうとよくある「悪魔もの」ですね。はい、確かにその通りで、悪魔払いの人が出てきて闘うわけですが、悪魔の方が強く返り討ちにあってしまいます。完全に体を支配された少女は施設の人たちを焼き殺し、どこへともなく去って行くという、こりゃ完全に興行収入次第ではさらなる続編を作ろうという魂胆が見え見えのラストです。最近のホラーって当たったら次を作ろうという下心があるからか、ラストで正義が勝つ、神の方が勝つというストーリーになっていないものが多いですね。神の力も落ちたものです。

さて、最後は「クロユリ」です。AKBを卒業した前田敦子の主演作ということでかなり話題になっていましたね。悪霊に取り憑かれていく前田敦子の狂気の演技が秀逸だったという劇評もありましたが、興行収入的にはどうだったのでしょうか?

内容は、TBSで映画公開の頃にスピンオフドラマをやっていたので、ミノル君がどういういきさつで悪霊となったのかはわかっていると思います。が、ドラマではかくれんぼでゴミ箱に隠れてそのまま回収された焼け死んだのではなく、実の親に殺されて(過失致死ですが)ゴミ箱に遺棄されたはずでしたが、そのあたりの細かなところがちょっと違っていました。

じきにネタバレになるのですが、前田敦子は家族でクロユリ団地に越してきたのではなく、大学(専門学校?)進学をきっかけに一人暮らしを始めたのですね。幼い頃の家族両校の事故で両親と弟を亡くし、自分一人が生き残ってしまったことへの負い目を抱き続けて生きてきたという設定。それにしても自立を促すためとはいえ、あれほどの症状が残っているのに前田敦子に一人暮らしを認めるとは、それまで育ててくれた伯父さん夫婦もどうかと思いますね。そして、そんな精神状態だからこそ悪霊につけ込まれてしまったのでしょう。

前田敦子を救う役回りの成宮寛貴もフィアンセを自分の自動車事故で植物状態にしてしまったという負い目を抱え、そこがまた取り憑かれる原因になっているという、これでは誰も救われないのが当たり前という設定です。そして、この手の映画でありがちな霊能者、本作では成宮の親戚のような手塚理美が演じていますが、どうもこれもミノル君にやられてしまったとおぼしき様子。そもそも前田敦子の住む団地でお祓いをしなくても効果はあるのかという突っ込みが入りそうでした。

最終的には成宮が犠牲になって一件落着なのか、前田敦子は精神を病んだまま逃れたものの、ミノル君の呪いは続くのか、ラストはぼかされている感じです。所詮、秋元康だとこの程度なのでしょう。「伝染歌」といい、「着信アリ」といい、秋元康のホラーは設定は時代を感じさせて面白いのですが、ストーリーがグダグダで、ホラーになっていない、オチが落ちていない気がするのはあたしだけでしょうか?

 

本作も、ああいうラストでしたから興行収入次第では続編を考えているのでしょうか?