どちらが賢いのか?

Facebookの続きです。

一冊入ってきた新刊が、入ってじきに売れたとします。その次にどうするかです。もちろん、その本のジャンルにもよるかと思いますし、こちら(出版社の営業)がそのお店に何らかのアプローチをするか否かという問題もあると思います。

ここでは、売れた直後のタイミングで、あたしたち出版社の営業がたまたまそのお店に足を運んだとしましょう。新刊が棚になければ、出版社の営業としては「あれ、配本がなかったのかな?」という心配と、「もう売れたのかな?」という期待が交錯します。でも、とりあえずはお店の方に声をかけるわけです。

で、その時のお店の方の対応はだいたい二通りです。その一は、「うちではああいう本は難しいから、一冊売れればもう十分だよ」というもの。もう一つは「それじゃあ、追加して、もっと積んでみようか」というもの。

どちらの方が賢い選択なのでしょうか?

入った本が売れたと言っても、他のお店でも順調に売れ、書評も出て、ますます売れそうな場合もあれば、たまたまそのお店では運良く売れたという場合があると思います。本の定価、ジャンルも問題になるでしょうし、そのお店の客層、どんな本がよく売れる本屋なのか、ということも関わってくるでしょう。

で、先の選択肢で前者の場合、一冊入って一冊売れました。消化率は百パーセント。返品もありません。数字だけを見ると優秀です。後者の場合、では3冊ないし5冊追加注文したとします。一週間か十日後に入荷して並べました。じきにまた一冊売れました、しばらくすると更に一冊売れました、となることもあれば、追加が全く動かない(売れない)、一ヶ月たってとうとうすべて返品することにしました、という可能性もありえます。いや、昨今のこの業界の状況を考えると、追加も瞬く間に売れてしまうなんて言うのはかなりの僥倖、何十冊に一冊、いや何百冊に一冊の確率かもしれません。となると消化率も下がるし、返品も生じ、最初にせっかく売れたのに、数字上は元の木阿弥です。

だから、最近の出版界では前者を選択するのが賢い選択と言えるのかもしれません。現に前者を選択する機会が多くなっているような気がします。それはそれで短期的には数字はよくなるとは思いますが、じきに行き詰まり、漸減あるは急降下の未来が待っていると思います。とりあえず、返品のことはおき、一冊売るだけで満足するのか、三冊、五冊と更に売ることを目指すのかという点で考えてみたいと思います。そうしないと、売り上げは伸びませんから。

だからといって、出版社側も書店に対して追加注文を出せ、と強く言えるわけではありません。強く言うためにはそれなりの論拠が必要になります。そして、追加注文をもらったからには、それがしっかり売れるような対策を書店の人と一緒になって考えないとなりません。

何ができるのか、書評が出るか出ないかは神頼み、テレビで紹介される、有名人がブログやツィッターで話題にしてくれるなんて、なおさら夢のまた夢。ポップを作るくらいしか思いつかない体たらくですが、もっと売ろうとしてくれる書店員さんに対しては精一杯、何かしたくなります(「してあげる」という表現は使いたくありません)。でも、何ができるのかと、いつも自問自答です。