空想なのか妄想なのか

白水Uブックスの新刊『ユニヴァーサル野球協会』は金曜日に見本出しでしたので、書店店頭にはまだ並んでおりません。が、出版社の特権と言いますか、本は出来上がってきていますので読み始めております。

まだ最初の四分の一ほどですが、この物語、自分なりの野球ゲームを考案した男性の頭の中で繰り広げられる架空のメジャー・リーグ、ユニヴァーサル野球協会の話なんです。全8チームの名前から順位、所属する選手や監督まで、主人公がきっちりと創り上げ、毎晩頭の中でゲームを楽しんでいるという寸法です。基本的にはサイコロを振って、その出た目によって進んで行くボードゲームのようなものらしいのですが、試合のシーンや選手の表情はもとより、ベンチの中の人びとの様子、観客の反応まで、実にリアルにイメージされています。

そう、読んでいると、ある男性がテレビであるいは球場で野球を観戦し、それを克明に記録しているかのような錯覚を覚えます。とはいえ、そこに出てくるチーム名も選手名もすべては主人この男性の頭の中のこと。言うなれば空想です、いや、妄想です。彼は、しかし、その妄想の野球リーグの記録をノートに記録し、時にそれをめくっては過去の対戦を思い出したりもしているのです。ここまで来るとどちらが現実で、どちらが妄想なのかわかりません。

と、そんな本書を読んでいて思ったのは、やはり弊社の書籍『みんなの空想地図』です。

この本も、こう言っては著者に失礼ですが、現実には存在しない、あくまで著者の頭の中で創り上げた架空の都市の地図です。妄想もここまで極めれば立派な芸術になるという一つの典型だと思います。ですから、『ユニヴァーサル野球協会』も、言うなれば「みんなの空想メジャー・リーグ」と呼ぶべきものなのかもしれません。

そんなことを考えながら読んでおります。配本は17日です。お手に届くまで、いましばらくお待ちください。