雪の降りだしそうな東京で……

パク・ミンギュの『短篇集ダブル サイドB』が深くしみます、特に最後の二編が。

それでも「アーチ」の方はストーリー展開も予想できる、ありがちと言っては申し訳ないけれど、そうこなくっちゃ、というエンディングです。とはいえ、ここまでずいぶんと執拗に韓国社会の闇と言うよりも息苦しさを描いてきたパク・ミンギュがちょっとホッとさせる掌編を贈ってくれたかな、という読後感です。

そしてページをめくって最後の「膝」は壮絶な、生きるための物語。時代設定がぶっ飛んでいるので多少は緩和されているかも知れませんが、この生と死のせめぎ合い、紙一重の綱渡り、恐らく韓国に暮らす大多数の人が感じているものなのではないかと感じます。真っ白な雪の中、主人公の「ウ」の孤独な状況と、常に「ウ」の脳裏を離れない家族のこと。

生きるため、生かすため最後の力を振り絞った後に「ウ」は何を失って何を手に入れたのだろうか? 寒空の日曜日に読んでいると、こちらの心まで冷えてくる作品です。

それにしても今回の短篇集、SF仕立ての話を含みつつも、とてつもなく悲しい作品ばかりです。どうしてこんな悲しみを抱えながら生きていなければ、生き続けなければならないのでしょう? 先のダイアリーにも書きましたけど、読み終わった時に『旅に出る時ほほえみを』の主人公《人間》の人生と重なる読後感です。時代も国も全然異なる作品なのに、同じものを読んだような読後感を味わっているのはあたしだけでしょうか?