文学が凶器に、楽園が地獄に

少し前になりますが、大手全国紙ではなく、各地の地方紙に李琴峰さんによる『房思琪の初恋の楽園』の紹介記事が掲載されました。李さんは刊行時のイベントにも登壇してくださいましたので、通信社が依頼をしたのではないかと思われます。



紹介文の中で李さんは「そんな一方的な願望をあざ笑うかのように、本作では文学がいとも簡単に凶器に変貌する」と指摘しています。それなのに主人公を追い詰める文学の装いだけは典雅なままです。「文学が暴力に、楽園が地獄になる様を目の当たりにした時、読者は戦慄を覚えずにはいられない」との感想はまさにそのとおりです。

ところで、楽園とは何だったのでしょう? 主人公たちが住んでいたマンションのわけはないですが、世間から見るとそれは紛れもなく楽園に見えているようです。あるいは台北で主人公と幼馴染みが住んでいた部屋、あるいは主人公をレイプした李国華のマンションのことなのでしょうか?

しかし、楽園とは追放されるところ、地獄に落ちる入り口だと、アダムとイブのころから決まっているのだとしたら、なんとも皮肉なタイトルだと思います。

それにしても、この作品はすごい作品です。