新書と単行本、ノンフィクションとフィクションでは書店店頭でも、フェアでもない限り一緒に並べることはないと思いますが、この両者は近くにおいていただけるとよいかなあ~などと思ったりします。
一つは平凡社新書の新刊『日本軍ゲリラ 台湾高砂義勇隊』で、それと並べて欲しいのは台湾の作家・甘耀明の『鬼殺し(上)』『鬼殺し(下)』です。
前者は
植民地台湾の支配・差別構造の下、最底辺に位置づけられた台湾原住民(高砂族)は、太平洋戦争時、南洋戦場へと送り出される。はじめは軍属として、戦況が悪化するにつれますます兵士として動員された彼らは、やがて、陸軍中野学校出身者の指揮下で過酷なゲリラ戦を展開する。闇にまぎれての敵軍施設爆破、グライダーでの特攻など、生還困難な作戦に従事し、補給の絶えたジャングルを逃げ回るその闘いを、生存者の聞き取りを交えて綴る。
という内容。後者は
1941年12月、日本軍を乗せた汽車が客家の村にやってきた。祖父に育てられた怪力の少年・劉興帕は、日本軍中佐の養子となって入隊し、日本人になることを夢見て戦う。だが敗戦を迎えると、今度は国民党軍が乗り込んできた。祖父は帕の片腕を切断してともに台北に逃れ、帕が日本兵だった過去を消すために偽の死亡証明書を手に入れる。帕は台湾人として再生を果たすべく、故郷へ帰っていく。日本への抵抗心を持ち続ける「鬼」としてさまよう帕の大叔父・呉湯興は、「鬼王」と呼ばれる客家の抗日英雄だった。二・二八事件まで続く台湾の混乱を目撃した鬼王は、村で帕と再会し、ついに自分を殺してくれと帕に頼むが……。常にアイデンティティの揺らぎの中で格闘する帕。台湾には孤児のようなイメージがつきまとう。歴史に翻弄され変貌する村を舞台に、いくつもの物語を紡ぐことで、人間本来の姿の再生を描ききった大河巨篇。
といったストーリーです。確かに直接の関わりがある両者ではありませんが、それぞれを読むことでお互いの作品の理解が深まるのではないかと思うのですが……