翻訳の最前線?

昨日は四ッ谷にある韓国文化院翻訳フェスティバルでした。かなり大きなホールでしたが事前予約で満席という盛況ぶりでした。

第一部は「本が生まれる現場から」と題して、晶文社、新潮社、白水社、クオンの編集者が翻訳作品を作る、出版するにあたって考えなどを披瀝、第二部は「翻訳の仕事最前線」として5名の翻訳家の方が実際の翻訳作業について、翻訳という仕事について語りました。そして最後の第三部は「翻訳コンクール」の授賞式でした。どれも興味深く、楽しいひとときでした。

個人的には、やはり出版社の営業として、第一部の編集サイドの意見というのは面白く聞けるものの、営業としてはまた異なった立場、考え方もあるだろうなあと感じました。もし機会があるのであれば、同じ出版社の営業部の人に登壇してもらって、翻訳作品について語ってもらうのも面白いかも知れません。

さて会場は、場所や主催者の関係もあり、韓国語や韓国文学に興味のある方が多かったのでしょうか? 業界関係者も少なからずいたようですが、多くのは翻訳家の卵のような方が多かったのではないか、という印象を受けました。翻訳コンクールに応募したけど選には漏れてしまった方もいたのだと思います。

あたしのこの印象が正しかったとして、今回のイベントがそういう方々にとって「これからも翻訳を続けていこう」という励みになったのか否か。いきなり出版社に自身で翻訳したものを持ち込んでもほぼ採用されることはないということでショックを受けた方も多かったのではないでしょうか? ただし、出版社としてもいつまでも同じ翻訳家にだけ頼っていることはできません。こういっては失礼ですが、翻訳家の方だって年をとりますし、いずれはお亡くなりになります。死んでしまっては翻訳を頼むことはできませんから、新たな翻訳家の発掘は出版社としても死活問題です。

もちろん生前においても、若い作家の作品を年老いた翻訳家が翻訳するというのはどうなのか、登壇されていた金原瑞人さんも多少ニュアンスは異なりますが、そんなようなことを語っていました。感覚にしろ言葉遣いにしろ語彙の選択にしろ、若いからこそ出てくるものってあるはずですので、そういう意味でも出版社は多くの翻訳家の方を、キープという言い方は失礼かも知れませんが、知り合っておきたいと考えているはずです。

まあ、独りでコツコツと作業をしている人がどれだけいるのか知りませんが、たいていの方は翻訳家の方がやっている翻訳教室や翻訳講座のようなものに通っているはずですので、その翻訳家の方を通じて出版社の人間を紹介してもらうのが一番の近道ではないでしょうか。出版社としても、ふだん仕事をしている翻訳家からの紹介であれば無視もできないでしょうし。

個人的には、第二部の座談、五名の方はアメリカ、ドイツ、台湾、イタリア、韓国の翻訳を主に手がけている方々でしたが、アメリカを除けばやはり翻訳の世界では少数派です。このあたりの、同じ翻訳家と言っても立場の違い、市場の違いに対する意識のずれやギャップが面白かったですし、興味深かったです。必ずしも英米が恵まれているわけでもないんだなあと感じました。