中公文庫から『日本航空一期生』が発売になりました。
これはもともと、あたしの勤務先から刊行されていた『日本航空一期生』の文庫版でして、ご自身も日本航空に勤務されていたことがあるという中丸美繪さんが書かれたもので、ウェブサイトには
敗戦から6年、日本の空を取り戻すべく、ナショナルフラッグを誕生させた人々の苦難と喜びを、客室乗務員をはじめ、数少ない生存者の証言を中心に生き生きと描く、渾身のドキュメント
と紹介されています。今回の文庫版、今朝の朝日新聞に載っていた広告では「新規取材を加えた決定版」とありますので、文庫化にあたって増補が行なわれたのでしょう。
ところで、単行本と文庫本、同じ本が出ていたらどちらを買いますか?
ほとんどの人は、安い文庫本の方を買うだろうと思います。
文庫版が出た時に単行本は品切れになっていることも多く、そもそも選択肢に入らないことも多いです。また、文庫は大手出版社が出していますから、新聞などに広告が出ますから、多くの人の目に付きやすく、文庫本が出て初めてそんな本が刊行されていたことに気づくこともしばしばです。
あたしももちろんそうなんですが、好きな作家とか興味ある分野、特に中国史などでは単行本が出た時点で購入している割合が高いです。そして、そんな本のほとんどは文庫になることもなく、数年後には消えていきます。
ただし、いくつかは数年後に文庫になって再登場するものがあります。そういう時に、再び文庫版も買いますか、ということを改めて尋ねたいと思います。
あたしの場合、文庫版も買う確率が高いです。まず上の『日本航空一期生』もそうであるように、文庫版になった時、増補がなされることがよくあります。あるいは文庫本独自の解説などが付くこともあります。それが読みたいがために文庫版も買ってしまうのです。
逆に言えば、単行本に何の手も加えずにそのまま文庫にしただけというのは、出版社の良心を疑ってしまいます。やはり装いを変えて出すからには何か一言あってしかるべきだと思うのです。もちろん、中には、単行本の一章、二章を削って、新たに数章書き足しているような文庫版もあったりしますが、そこまでいくと同じ本の文庫版として刊行してもよいのか、まるで別の本ではないのか、という気もしますが……
あと、文庫ではなく、あえて単行本を買う理由の一つとして、図版などが大きく扱われているので見やすい、というのもあります。中には文庫化にあたって巻頭のカラー口絵をカットしてしまう場合もありますので、図版が命な書籍の場合、判型が大きな単行本がやはり見やすいと思います。
こんな風に、あたしは好きな本であれば単行本も文庫本も買ってしまうタイプなのですが、単行本のよさは装丁の美しさでもあります。文庫は各レーベルのデザインに沿ったものになりがちですから、趣向を凝らした単行本のデザインにはかないません。紙質なども含め、本好きは文庫よりも単行本という人が多いですね。
ところで、上述のように、それなりに理由があって、単行本を持っていても文庫本をあえて買うわけですが、時に文庫化にあたってタイトルを変えて出されることがありますが、そうなると違う本だと思って買ってしまい、よくよく見てみたら「なんだ、あの本の文庫だったのか」と気づくこともあります。
しかし、タイトルを変える場合は、上に書いたように、内容の書き換えや増補もかなりの割合で行なわれていることが多いので、買ってしまって損をした、という気にはなりません。たぶん、本好きな人なら同じような体験、何度もしていることだと思います。