文学作品で歴史の勉強

地下鉄道』を読み終わりました。後半は一気でした。それぐらい素晴らしい作品です。

ここでは感想はおくとして、本作を読んだ方には『地図になかった世界』『ネバーホーム』の二作品も併せて読むべきだとお薦めします。多くの方が既に読んでいるのかも知れませんが(汗)。

  

知らない方のためにあえて書きますと、三作とも舞台はアメリカです。描かれる時代は『地図になかった世界』と『地下鉄道』は19世紀前半から半ば、『ネバーホーム』は南北戦争(1861年~1865年)が舞台なのでやはり同じような時代の物語です。少しずつ重なりつつ、主人公同士がすれ違っていてもおかしくないような三つの物語でした。

アメリカの黒人の歴史や南北戦争については本もたくさん出ています。文庫や新書などの比較的気軽に手に取ることの出来るものもあります。ただ、その手のノンフィクションや準専門書っぽいものは苦手という人も多いと思います。そんな方にはこういった文学作品で歴史を学ぶのもよいかと思います。

これらの作品中の個々のエピソードは著者の創作でしょうが、そこにはベースとなった事実があるでしょうし、一流の文学作品は歴史の真実を描いてみせてくれるものです。専門書だけが歴史を教えてくれるものではないと思いますし、こういう作品から、専門書へ進むという道もあってしかるべきだと思います。

幸いにして、あたしたちはその後のアメリカでは南北戦争が起こって、奴隷が解放されるようになったという歴史事実を知っています。『地下鉄道』の主人公たちに「もう少しの辛抱だよ」と、この事実を教えてあげたい衝動に駆られます。

しかし、その一方で、いまだにアメリカには根強い黒人差別があり、白人警官が黒人に暴力を振るったというニュースをしばしば耳にします。さらにはトランプ大統領によるメキシコ系移民排斥の方針表明など、自由の民主主義の国アメリカとは思えない事実がいまだに存在していることを、これらの作品の主人公にどう伝えたらよいのでしょう?