学生は本を買わない

本日の朝日新聞の記事です。神保町交差点そばにあった岩波ブックセンター信山社の跡地にあたらしい書店がオープンしたという記事。

このお店、あたしの勤務先のご近所なんですが、まだ行っておりません(汗)。いつでも行けると思うとなかなか行かないもので、どんな風に変わったのでしょう?

ところで、この記事に三省堂書店の松下さんの言葉が紹介されています。

チェーンの飲食店やドラッグストアが増え、「独自性がなくなりつつある」。古書店の中には神保町を倉庫として利用し、実店舗を構えない店もある。近くには大学も複数あるが、新年度などの教科書の購入が必要な時期以外で、大学生を見かける機会は少なくなった

確かに、もう25年も神保町で働いていて、学生時代から数えると30年以上になりますが、古本屋が減ったなあという印象はあります。言葉どおり、どこででも見かけるチェーン店が多くなったのは神保町に限らないと思いますが、古本屋が廃業してそこにそういったチェーン店がオープンすると、やはり寂しいものを感じます。

では、お前はふだんどれくらい古本屋を利用しているのか、と問われれば実はここ十数年、たまに覗くことはあっても買ったことはありません。学生時代と現在とでは必要とする本の傾向が変わったというのが主な理由です。

学生時代は東方書店や内山書店で中国から輸入される原書を買いまくっていましたし、漢文関係の古書もバイト代が入ると買いに走っていたものです。現在はもっぱら新刊の小説などを買うことが多いので古本屋を利用する機会が減っているのです。

また学生時代は文庫や新書も、新刊で手に入らないものは古書店を探しまわったりしたものですが、そういうものはあらかた学生時代に買ってしまったので、古書でないと手に入らないものも少なくなりました、文庫や新書に関しては。

で、再び松下氏の言葉ですが、「大学生を見かける機会」が少ないとあります。あたしが社会人になったころ、主力である語学書は大学の近くの本屋でよく売れると言われたものです。もちろん大学内の書店も同様で、春先の営業では大学内や付近の書店への営業が主でした。小さいお店でも学生や先生が訪れるので、それなりに高額な本、専門的な本が売れる、というのが常識だったのです。

ところが最近はまるで違います。

大学生協の品揃えは、一部の大学を除くと書籍は縮小傾向にあり、中には教科書シーズンの時だけ会議室などを借りて教科書を販売し、通年では書籍を扱っていないところもあります。否、そういうところはそもそも生協が最初からなくて、教科書シーズンには地元の書店や丸善などの外商部が出張販売をしている場合が多いようです。

学内がそんな状況ですから、大学の近くにある書店も推して知るべしです。昔ながらの縁で位までにそこそこ語学書を扱ってくれている書店もまだまだ多いですが、だんだんと縮小傾向に感じます。大学付近の書店への春先の営業も昔ほどは積極的ではなくなってきました。

これが大学生の現状と言ってしまうと一方的な意見ですが、書籍の購入という点で言えばそれほど的外れな意見ではないと思います。売れないから置かない書店、置いてくれないから営業に行かない出版社、という悪循環で割りを食っているのは真面目に勉強し、本も買いたいと思っている学生さんでしょう。身近なところに書店がないから、あったとしても品揃えが満足できないから、結果としてアマゾンへ向かうのだと思います。