タイトルだけ見ると、なにやらエッチなことを書くのではないかと思われそうですが、そう思われても仕方ないほど、日本では、と言いますか、日本語では「アダルト」や「成人」に猥褻な意味が必要以上に含まれてしまっている気がします。それを如実に感じたのは、あたしがヤングアダルト出版会に参加していたころで、各地の公共図書館や学校図書館の方と研修会を開こうと思って連絡を取ると「アダルト」という言葉に過剰反応され、「そういういかがわしいことはできません」と断わられることがしばしばありました。
もちろん図書館の現場では「ヤングアダルト」コーナーはそれなりの存在感を持っていて、「ヤングアダルト」ですぐに話が通じ、トントン拍子に話がまとまることも多々ありましたが、時に上述のように妙な目で見られることがあったのも事実です。
図書館の方ならまだよいのです。実際に図書館の会議室で研修をやるとして、図書館の入り口などに「ヤングアダルト出版会合同研修会」的な看板が出ていたりすると、それを見た来館者が「なんかエッチな催しがあるみたい……」と勘違いされたことも多々あったのではないかと思います。
そんな経験から、この数年、ヤングアダルト出版会は頭文字である「YA」を前面に押し出すようになりました。少しでも見た目の印象が和らげば、という配慮からですが、裏を返せば、これだけ盛んに活動しても、世間一般に「ヤングアダルト」という言葉を定着させられなかった非力さも痛感します。ちなみに、書店では図書館とは異なり、ほぼ「ヤングアダルト」コーナーなどはないですし、専門の棚もありません。
正直なところ、この世代はラノベや学参を除けば、ほとんど本など買わないので、そんな顧客のために限られた棚やスペースを割くのは儲けにならない、という判断なのでしょう。それは重々承知していますが、欧米の書店や日本でも洋書店に行くと「Young Adult」コーナーはしっかりあるもので、この彼我の差は何に由来するのか、個人的にも気になります。
ただ、洋書の場合、たいていは「Young Adult Novels」とあって、ほぼ小説に限られるのですが、ヤングアダルト出版会など日本の現場では、図鑑のようなものをはじめとしたノンフィクションも混じっていて、書店サイドからすると雑然とした棚になってしまうという問題もあるようです。
それにしても、ヤングアダルト、つまりはティーンエージャーですが、彼らが本を読んでくれないと大人になっても本を読むという習慣ができないので、将来的な読書が育たないという由々しき問題があるのですけどね……。朝の読書が小学校や中学校では盛んですが、中学校以降になると部活と塾通いで本を読む時間や習慣がなくなってしまうらしいです。いまの子どもは忙しすぎるのでしょうか?
という長い長い前振りはこのくらいにして、今朝の朝日新聞の一面で初めて知ったのですが、「AYA世代」という言葉があるのですね。「Adolescent and Young Adult」という言葉の頭文字だそうで、その意味は「思春期と若年成人」ということらしいです。年齢で言うと「15歳から29歳」だそうです。
いわゆるYAとは重なりつつもちょっと上の世代になりますね。でも、YA向けに出した青春小説のようなもの、読者、購買層は意外にも中高生より大学生や社会人が多かったりします。特に泣ける巻同型のストーリーですと女子大生やOLがメインの読者だったりするものです。少し大人になって若かったころの自分や青春時代を懐かしく振り返るのでしょうか?
となると、ヤングアダルト出版会(=YA出版会)も「AYA出版会」と名乗るくらいの発想の転換が必要なのかも知れないなあと感じます。書店店頭でも「AYA」であればコーナーを作れるのではないか、とも思います。どうでしょう?
そういえば、何年か前に、こんな映画がありましたね。30代の男女が高校時代を懐かしんで、的なストーリーだったでしょうか? やはり少し上の世代を巻き込むのがYAのポイントなのかも知れませんね。