個人としては賛成ですが……

改めて今朝の朝日新聞に載りました。

例の文春文庫と図書館の件です。

正直なところ、この十年くらいでしょうか、電車の中で、図書館で借りた文庫や新書を読む人が増えたなあと感じます。それまでも単行本は、図書館のラベルが貼ってある本を読んでいる人がしばしば見かけたものですが、文庫や新書はほとんど見かけることはありませんでした。それが、この十年くらいは文庫や新書でも図書館のラベルが貼ってある本を読んでいる人が確実に増えたと感じます。

しかし、それ以上に、電車内で本を読む人が減ったと思います。かつては、ジャンプなどの発売日には電車の中で読んでいる人がたくさんいて、そんな光景から「今日はジャンプの発売日か」とか、「○○が発売だから今日は○曜日か」と思ったりしたものです。そんな光景も今は昔。

さて、この文藝春秋社長の提起。

あたし個人としては、やや値段の高い単行本は仕方ないとしても、文庫や新書くらいは買いましょう、買ってよ、と思います。もちろん本に接する機会が増え、その結果「やはり欲しくなったから、手元に置いておきたくなったから買おう」と思う人が増える、という理屈もわかります。逆に、文庫・新書を図書館で扱わなくなったら、買う人が増えるよりも、読みも買いもしない人が増えるだけという理屈も理解できます。どちらも例外的な人もいるでしょうが、昨今の不景気では、借りてでも本に接してくれる人が増えるのはよいことだと思いますが、肝心の図書館の利用率や貸出率がこの十年くらいでどれくらい上がっているのか……

一つの方法として、文庫や新書は館外貸し出し禁止にするというのはアリだと思います。館内でパラッと見てもらって、気に入ったら買ってもらう、ということです。そういう意味で、図書館と書店を併設するツタヤのやり方は巧いのかも知れません。

いま、「パラッと見てもらって」と書きましたが、単行本でも1時間や2時間もあれば読み終わってしまいそうなものもあれば、文庫や新書でも文字がぎっしり詰まっていて、読むのにも理解するのにも時間のかかるものがありますので、実は、単純に形状だけで分けてよいものか、とも思います。

記事ではキングコングの西野がコメントしていますが、彼のような知名度があり、それなりにアピールできるし、マスコミも取り上げてくれる人と、ほとんど知られていない作家(たぶん、大部分の作家はそうでしょう)を同じ土俵で論じるのはどうかとも思います。そもそも本屋でたくさん売れていれば、図書館での貸し出しが多くても、出版者は痛くも痒くもない、気にならなかったのでしょうが……