元は取れているの?

今日の朝日新聞にこんな記事が載っていました。

大手のコミック誌がネットで無料の作品公開をしているそうです。記事ではそこまで細かいことは書いていませんが、想像するに若手の、まだ売れていないマンガ家の作品を公開しているのではないでしょうか? マンガ家の方としてはタダでもよいから作品を発表する場があれば、それをチャンスに紙媒体の連載を勝ち取れる、と期待しているのではないでしょうか?

実際には、このサイトで人気が出て単行本の発行にこぎ着けた作品がいくつもあると言いますから、連載を勝ち取るどころか単行本発行まで一気に行ってしまっているわけですね。こういう無料サイトの作家さんにギャラ、つまり原稿料は支払われているのか、記事ではわかりませんが、恐らくコミック誌のギャラの何分の一にもならない額なのではないでしょうか? だって、そうしないと維持できないでしょうから。

もちろん、出版社側も記事中にあるように、漫画に親しむ読者の新規開拓、単行本化によって収入を得る、新しい作家の発掘といったいくつかのメリットもあるでしょうけど、同じ出版社の人間として果たしてどれだけ採算ベースに乗るのか、かなり疑問を感じます。

たとえば、あたしの勤務先では月刊誌の「ふらんす」というのを発行しています。もちろん毎号特集や連載記事があります。たとえば、この紙媒体の本誌とは別に若手のフランス語教員、フランスに関わる仕事に従事している方に連載をお願いするとして、それによって読者はどれだけ新たに開拓できるのでしょうか? そして「ふらんす」本誌にどの程度よい影響が表われるのでしょうか? ネットで人気になった連載を単行本化したとして、果たして売れるのか? ホントして出版する以上、ある程度の部数がはけないと黒字にはなりません。

こう考えると、昨今はネット発の書籍も増えていますよね。あたしの勤務先でもこんな本がウェブ連載発で大ヒットしました。

 

こういった流れは、これまでの雑誌連載の単行本化と同じことなのだと思いますが、だからこそ同じ問題も抱えているのではないでしょうか? つまり、連載だからこそ面白く読めて人気になるけれど、単行本としてまで読みたいか、ということです。他社の本で恐縮なんですが、かつて連作を一冊にまとめた本を読んだことがあります。たぶん雑誌連載中は雑誌の数ある記事の中のオアシス的な読み物として人気を博したのではないかと思います。でも、いざ単行本になったものを読むと面白くないのです。エッセイのようなものでしたからかもしれませんが、雑誌の時のように他の記事がないので、面白さが浮き上がってこないのが原因ではないかと思います。

雑誌の連載が何でもかんでも単行本になるわけでもないように、ウェブ連載もすべてが単行本になるわけではないということです。となると、やはりウェブ連載を依頼する時から、これは将来単行本化できるか否か、吟味する目を持たないとならないわけですね。また一つ仕事が増えそうです(汗)。