ナチと司法

こんどの朝日新聞読書欄で『ヒトラーの裁判官フライスラー』が取り上げられる模様です。となると、一緒に並べて欲しいのが最新刊の『ナチ強制収容所における拘禁制度』です。

 

ウェブサイトの内容紹介によりますと、前者は

ローラント・フライスラーは、ナチス政権下で政治犯罪を扱う国家最高審「人民法廷」で長官を務め、無数の死刑判決(ほとんどが見せしめ裁判)を下した、悪名高き人物だ。本書は、新史料や司法関連文書に基づいて、独裁者に仕えた「血の裁判官」フライスラーの実相に迫り、ヒトラー体制下と戦後ドイツの司法界の闇を暴く、戦慄の書だ。歴史的な裁判として、ナチス抵抗運動の青年グループ「白バラ」の被告人たち、1944年7月20日の「ヒトラー暗殺未遂事件」の被告人たちに、死刑判決を下し、即時執行……という顛末を再現する。時には被告人のベルトやネクタイを取り上げ、容赦なく貶め、感情的な大声で罵倒したというフライスラーは、1945年2月、人民法廷の中庭を横切っていた際、ベルリン空襲の爆弾の破片が直撃し、急死する。本書は、ナチス・ドイツにおいて司法の独立性が奪われ、政治の道具になっていく経緯とその恐るべき帰結を鮮烈に描き出し、現代にも問いかける意味は重い。著者はドイツの高名なジャーナリスト。著者特別寄稿「記憶と忘却について 日本語版読者の皆さまへ」と、「死刑判決文」・史料多数を収録。

とあり、後者は

「ナチ強制収容所」といえば、看守たちによる恣意的な暴虐が横行していたという先入観が強い。しかし本書では、そのような見方を退け、実際には細部にまで及ぶ詳細な「拘禁制度」が存在し、規範が厳格に適用された結果の「地獄」の実態を、気鋭の法学者が精緻に分析する。様々な規範(懲戒、強制労働、配給食、郵便、死刑制度)を、記録文書をもとに綿密に追っていくが、概ね規則正しく運用されていたことが分かる。強制収容所があくまでも通常の国家機関であるように見せるため、被収容者には労働法を適用させるかのように各種手当が支給されたり、売春施設に行くことが許された特殊なケースもあった。強制収容所からの生還者、フランス・レジスタンスの闘士でもあった、世界的大ベストセラー『怒れ! 憤れ!』の著者ステファン・エセルは、本書に寄せた「序文」で、「法学者ならではの厳密さで、拘禁される者たちが収容所に到着するところから、彼らの死体が焼却されるための手続き、その灰がどのように処分されるかを細かく定める拘禁制度を、ナチの官僚的手順に沿って再現してみせる」と述べる。まさに「規制された地獄」の本質に迫る、斬新かつ戦慄の論考。

とあります。いみじくも、どちらにも「戦慄」という言葉が使われています。

たぶん、両者を併読すると、ナチにおける司法、という側面が見えてくるのではないでしょうか?

もちろん書店店頭では、『私はホロコーストを見た(上)』『私はホロコーストを見た(下)』や『14歳のアウシュヴィッツ』なども併せて展開していただけると嬉しいです。

それにしても、わが勤務先ながらヒトラーやナチ関連書籍がなんでこんなに多いのでしょう?