失敗の本質? 敗因分析? 商談会とは?

先日のBOOK EXPO 2016は盛況だったようです。確かに午前中から多くの方が来場されていたと感じました。東京の大商談会と比べてどうかと問われると、俯瞰的に見えていないのでなんとも言えませんが、少なくとも自社ブースの前を通る人は多かったと感じました、まあ、それも会場内のどこにブースを出しているかという要素も大きいと思いますが……

とりあえず、少し時間がたってしまいましたが振り返ってみたいと思います。

まず肝心の成果ですが、あたしの勤務先についていえば渋かった、厳しかったと言わざるを得ません。愚痴っぽくなりますが、そもそも商談会に来ている書店の方、お目当てはコミックや児童書、それに実用書といったところで、来場者名簿を見ても、知っている書店の名前はあっても、参加予定の書店員は知らない方だったりします。つまり、あたしが逢っている人文や文芸などの担当者ではなく、恐らく雑誌やコミック、児童書などの担当者が参加していたのでしょう。

どうしてそう言えるのか?

会場内の動きを見ていればわかります。そういう出版社のブースにばかり人が集まっているからです。ある書店の方に聞きましたが、これからクリスマスなどの商戦に向け、ふだんなかなか逢えない出版社のブースでクリスマス商戦向けの商品を注文するのが主目的だそうです。はっきり言って、絵本が目当てなんでしょうね。

ですから、専門書の出版社はほとんど出ていないか、出ていても閑古鳥が鳴くような有り様と言ったら言いすぎでしょうか? でも決して誇大な表現ではないと思います。紛れもない実感です。あたしのブースの前を通る書店の方、ブースに貼ってある出版社名を見て「あっ、ここは関係ない」という表情で通りすぎていきます。ほとんどがそんなところです。東京でも大阪でも、この数年参加していますが、これが実情です。

それがわかっていて、なんで参加しているの? 出展料だって払っているんでしょ?

というのはきわめて当たり前の疑問だと思います。それに答えるとすればこうなります。

町の書店でも、あたしの勤務先のような出版社の本を置きたいと思っている書店はきっとあるはずだ。でも、何もしなければ新刊も入ってこないし、何かフェアとかやりたいと思っても、コネも何も築けていない。この商談会で顔つなぎをして、少し置かしてもらえないか相談してみよう。

そんな風に考える書店の方が来てくれるのではないか、そう思って出展しているわけです。結果はどうかと言えば、まるっきりないわけではありません。過去に数件、そういう風に声をかけていただいて新刊案内を送るようになった書店もあります。配本するようになって売り上げが上がってきたお店もあります。

とはいえ、丸一日ブースを出しての成果としてはあまりにも低い、低すぎます。もう少しこちらも工夫をしないと、何の成果もないというに等しい状況がこれから先も続いてしまいそうです。ではどうしたらよいのか? すぐには答えは出ませんが、絶えず考えていきたいと思います。

話は少し横道にそれますが、数年前、東京の商談会に初めて参加したのは、似たような専門書数社で揃って出展したのがきっかけです。たぶん10社くらいで参加したのではなかったかと記憶しています。ブースを連ねて出展しましたが、われわれの一郭は見事に来場した書店の方に避けて通られました。その一方、東京国際ブックフェアでは、やはり10社くらいの人文系出版社でブースを連ねて出展していますが、会場内でも毎年一、二を争う盛況なブロックになっています。

同じような出版社のブースでありながら、書店はあまり寄ってこないのに、読者は群がってくるという好対照。もちろん東京国際ブックフェアは、2割引きでクレジットカードも使えるという、本好きにはお得な場であり、商談会と同列に論じることはできません。単純比較はできない両者ではありますが、出版社が商品をアピールするという点では同じです。この違いは何なのか?

そんな話を書店で専門書担当の方と話していたら、その方は「読者が求めているものと書店が求めているものがズレているのではないか、読者のニーズを書店がつかみ損ねているのではないか」という分析をされました、否、分析というよりも感想と言うべきでしょうか? しかし、この指摘は非常に示唆するものがあります。考えるきっかけをくれたような気がします。