本は友だち?

昨夜から、今年のノーベル文学賞がボブ・ディランに決まったという話題で持ちきり……というほどでもないか。

しかし、今朝の朝日新聞の一面が上の画像ですが、タイ国王の逝去とボブ・ディランのノーベル賞受賞って、扱いが逆ではないかと思うのはあたしだけでしょうか? 別にタイ国王のニュースが圧倒的に大きいはずだ、とまでは言いません。それでも、この大きさの比率はちょっとおかしいのではないか、と思います。

それはそうと、ボブ・ディランの受賞でちょっと沸いているのが欅坂46のヲタたち。彼女たちのセカンド・シングル「世界には愛しかない」の通常盤に「ボブディランは返さない」という曲が収録されているのです。これでちょっとヲタたちが「おおーっ」って騒いでいるわけです。

しかし、「ボブディラン」って何? 「ボブ・ディラン」ですよね? 秋元康、わざとなのでしょうか?

閑話休題、ノーベル文学賞。

毎年ノーベル文学賞の時季になると書店店頭では関連書籍のコーナーを作って、特に村上春樹コーナーを大々的に作って拡販に努めるのが恒例、ほとんど年中行事のようになっています。ハルキが受賞しなくても、たいていは邦訳のある作品が受賞するので、発表と共に自店には在庫があるか、何か邦訳はでているのか、どこの出版社から出ているのか、既に品切れや絶版になっていないか、などなど毎年書店員の方は忙しいと思います。

もちろん出版社も自社の本が関連するか否か、それによって売り上げが変わるので固唾を呑んで見守っていたりします。

が、毎年発表が夜の7時や8時ころになるので、出版社は業務終了、書店員だって帰宅している方も多いはず。発注したりといった作業は翌朝以降になるのが常です。もちろん親しい出版社営業マンを知っていれば、その人のケータイに電話をして、在庫確認やら在庫確保やら、いろいろお願いしたりすることも、やはり風物詩です。

しかし、ノーベル賞を取ったからといって本が売れるのか、と問われると、実はかなり慎重に見極めないとならないだろう、というのが出版社の人間としての意見です。恐らく今日は朝から、ディラン関連書籍を出している出版社にはたくさんの電話やファクスが来ると思います。それを全部受けていたら、確かにかなりの部数になります。売り上げ金額だってそれなりに計上できるでしょう。でも、実際に売れるのかというと、これがまったくわかりません。

邦訳が単行本しか出ていないような作家ですと、代表作はそこそこ売れます。特に新聞に受賞作家のプロフィールが載りますが、そこに取り上げられた作品は比較的よく売れます。しかし、単行本だけでなく文庫も出ていたりすると文庫ばかりが売れ、単行本はほとんど売れない可能性が高いです。やはり、「ノーベル書を取ったようだから一冊くらい読んでみるか」という読者にとって価格というのはかなり大きな判断材料になるようです。

で、今回のボブ・ディランです。本はそこそこ出ていると思います。音楽系の雑誌の別冊や増刊でディランを特集したものもあるでしょう。値段がそれほど高くなければ売れると思いますが、少し根の張る評伝的なものは苦戦すると思います。それでも出版社には書店から注文が殺到しているでしょうから、それに踊って増刷したりすると3か月語に返品の山になる可能性が非常に高いので気をつけなければなりません。

特に今回のように受賞者が歌手ですから、これは初めてのことで、本がどれくらい売れるのかまったく予想がつきません。あたしは、本ではなくCDが売れるのではないか、と予想しています。なので、今回は書店ではなく、CDショップが活気づくのではないでしょうか? TUTAYAとかHMVのように半分書店もやっているようなところならよいでしょうが、一般の書店がディランの書籍を集めてコーナーを作っても厳しいのではないか、というのがあたしの遠慮ない予想です。

もちろん、それでもディランの関連書籍がまるっきり売れないということはないはず。やはりこの機会に、ディランの音楽は散々聴きまくってきたから、今度は評伝や評論でも読んでみるか、と考える人は多いはずです。出版業界の一員としては、CDに比べたら売り上げは何十分の一、何百分の一かもしれませんが、そういう人の需要に期待したいところです。

で、最初に取り上げた朝日新聞の「声」欄にこんな投稿が載っていました。10代の子の本に対する提言です。なかなか面白いですね。あたしが興味を持ったのは山形の方の投稿の方です。

友だちが作れなくて本ばかり読んでいた、というのはよくある話です。だから、「本ばかり読んでいて暗い」などとレッテルを貼られ、ますます本の世界にのめり込んでしまう、というのもしばしば聞かされるストーリーです。でもこの投稿者の場合、本好きから同好の士に巡り会え、友だちを作ることに成功したようです。

こういう嬉しい出来事、読んでいるとほっこりしますね。