『帝都東京を中国革命で歩く』という書籍が刊行になりました。あたしの勤務先のウェブサイトで連載されていたものを書籍化しました。読んで字のごとく、東京に中国革命の志士たちの足跡を追ったものです。
辛亥革命前後、多くの中国人が日本に滞在していたというのは、中国近代史を学んでいる者にとっては常識に近いものですが、一般の方でも横浜や神戸の中華街、そこに住む華僑の人たちを見れば、課なり古くから中国人が日本に住み着いているというのはわかっていただけると思います。辛亥革命前後に特に多くなったのは、中国での政変を避け日本に亡命した人もいれば、明治維新を経て近代化に成功した日本に学ぼうと留学生として来日した人もいました。
そんな彼らが日本に来てどんなところに住んでいたのか、どんな場所で活動していたのか、当時の地図を眺めながら東京の街、特に早稲田、本郷、神田界隈を歩く、というのが本書の趣旨です。中国近代史に興味のない方には登場する人名が覚えられないかもしれませんが、少なくとも東京に住む方、縁のある方であれば、「へえー、そんなところに中国人たちの宿舎があったんだ」といった発見があると思いますし、歴史書というよりは肩の凝らない街歩きガイドブックとして読めると思います。
が、単なる街歩きの本と言うには、当時の場所があまりにも変わってしまっていて、正直なところ「もはや歩けない」と言った方がよいでしょう。ですが、本書の魅力は、孫文や魯迅といった有名人だけでなく、日本人にはまだ馴染みがないかもしれませんが、革命の志士たちの略伝として、特に日本で暮らした若いころを中心とした物語として読めるところにあります。何か辛亥革命のころの本を読みたいと思ったときに、一般の方では専門書は歯が立たないと思います。でも、本書ならそんな予備知識もいりません。そして読み通せば、歴史の流れと主要な人物の輪郭が頭にインプットされていること間違いありません。さらに知りたい方は本書を手掛かりに次のステップへ進むとよいでしょう。
最近ですと、こんな本が出ています。
『孫文』と『梁啓超』、どちらも岩波書店です。他にもこの時代の人の伝記的なものはたくさん出ていますが、比較的新しいものが続けざまに出版されたので目に留まりました。
あと、魅力的な人物(志士たちはみな魅力的ですが……)に黄興がいます。書籍では手頃なものがないですが、ジャッキー・チェン主演の映画『1911』の主人公が黄興です。この映画を見れば、この時代の流れが頭に入ってくるでしょう。
とまあ類書はいろいろあるのですが、まずは同じ著者の『革命いまだ成らず(上)』『革命いまだ成らず(下)』を一緒に並べていただけると、いやこれは既刊ですから、それと一緒に最新刊『帝都東京を中国革命で歩く』を並べていただければ幸いです。
というわけで、タイトルは決して爆買い中国人が闊歩する銀座などのことを言っているのではありません、悪しからず。