今だって、10代に薦めたい?

このところ書店店頭で『今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150!』を中心に、そこで紹介されている本を集めたフェアを実施しているのを見かけます。

YAというのはヤング・アダルトのことで、アダルトとは言っても猥褻なものとは全く関係なく、10代、つまり中高生、ティーンエイジャーを指す言葉です。つまりは、もう子供でもないけれど、かといって大人というわけでもない年齢層です。そういえば、ジュブナイルなんて言葉も流行ったことありましたよね。

さて、出版元のページには作品リストも載っていますが、これらの本が棚に並んでいるのを見るのはなかなか壮観です。ちなみにこの本は、読書推進運動協議会による「若い人に贈る読書のすすめ」とは別ものです。

こういったものとは別に、ヤングアダルト出版会という団体もあり(ウェブサイトが繋がらないので、Facebookページのリンクです)、中高生向けの読書推進活動を行なっていて、あたしの勤務先も同会の一員となっています。YA出版会でも毎年フェアなどを書店向けに提案したりしています。

話は戻って『ブックガイド150』ですが、そこに挙がっている本には残念ながらあたしの勤務先の本はありませんでした。たとえば、これがいまではなく、十年前に刊行されていたら、どんな本が並んだでしょう? もちろん、この10年の本は載っていないはずですが、その代わりどんな本が載っているのか興味が沸きます。「10代のための」って言われても、やはり時代によって変わるものなのでしょうし、どんなに時が流れてもリストに載り続ける作品もあるのではないかと思います。

という思いで眺めたときに、先にこのダイアリーでも触れた「若者たちの三大バイブル」が一つも入っていないことに気づきました。繰り返しになりますが、三作品を挙げておきますとサリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライv』(あるいは『ライ麦畑でつかまえて』)、ケン・キージーの『カッコーの巣の上で』、そしてジョーゼフ・ヘラーの『キャッチ=22()』の三つです。

  

 

この三つを三大バイブルと紹介したのはダイアリーでも引用した松岡正剛さんです。あえてもう一度引用すると松岡さんは「1960年代のアメリカで若者たちのバイブルになりかかっていた文芸作品」と書いています。正確には「なりかかっていた」のであって、「なった」わけではないようですが、それでもこの三作品が圧倒的な人気を誇ったことはわかります。

60年代の若者には圧倒的に支持されていたけれど、いまの10代には響かないのでしょうか? ちなみにこのたび新装復刊された『キャッチ=22』の解説では『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と同書が、当時の高校生の課題図書リストの常連であったとも書かれています。

60年代と現在とでは半世紀の時の流れがあります。そしてアメリカと日本という国の違いもあります。それでも、いまの日本の10代にこれらの作品はまだまだ響くと思うのですが……

問題は三作品の分量でしょうか? いまの若者、こんなに文字ばかりの長い作品、読み通せないかもしれないですね。