センスの問題か? 情報収集能力の問題か? それとも……

関西ツアーを終えて、別に東京でも関西でも書店営業に変わりはないのですが、書店を回っているといろいろな本を目にします。

「あっ、こんな本が出てる! だったら、うちのあの本と一緒に並べてもらえないかな?」

と、そんなふうに思うこともしばしば。そんな事例をいくつか……

まずはちくま学芸文庫の『ラカン入門』は、その隣に文庫クセジュの『ラカン』を並べて欲しい一冊です。そして、両書とも文庫や新書の棚ではなく、心理学など人文書コーナーに並べてもらえると、なお嬉しいところ。

 

さらに河出書房新社から出たばかりの『たんぽぽ殺し』の隣には、「エクス・リブリス・クラシックス」の最新刊『マナス』を置いてもらいたいものです。もちろん、同じく河出書房新社の『ベルリン・アレクサンダー広場』も忘れてはいけない一冊でしょうけど。

  

ところで、『たんぽぽ殺し』が単行本であるのに対し、『マナス』が「エクス・リブリス・クラシックス」というシリーズの一冊であるためか、『マナス』はシリーズのところに置かれている書店も多いです。同じ著者なのですから、是非とも隣どうしで並べて欲しいのですが、多くの書店ではそうなっていません。

「あっ、あのシリーズか……」という感じで棚のシリーズのコーナーに並べられてしまうのでしょう。シリーズの一冊と単行本とをできるだけ、少なくとも新刊期間中だけでも一緒に並べてもらうには、われわれ出版社の営業が懸命に努力するしかないですね。それでもすべての書店を回ることは不可能ですから、こういった情報発信を続けるしかないのでしょうか?

このようなシリーズと単行本という関係で言えば、スティーヴ・エリクソンの『ゼロヴィル』は単行本、数年ぶりに重版した『黒い時計の旅』は白水Uブックス、そして『きみを夢みて』はちくま文庫と三者三様。これを一緒に並べるのは、書店現場ではなかなか至難の業なのでしょうか?

  

もちろんミルハウザーの『ある夢想者の肖像』と『イン・ザ・ペニー・アーケード』も、同じく単行本とUブックスという間柄ですのでお忘れなく!

 

それにしてもこういう営業って、書店店頭に本はあるわけですから、その並べ方を示唆するだけ。つまり新たに注文が取れるわけではありません。「いくら注文を取ったか?」という尺度で営業成績を測られたらゼロ査定になりますが、大事な仕事だと思います。

もちろん少なくない書店で、上記のような組み合わせが一緒に、隣どうしで並んでいます。そんなとき「ああ、気づいてくれている」と思い、ちょっぴり感激します。

こういったことに気づくというのは、たまたまだったのか、書店の方のセンスなのか、あるいは情報収集力の差なのか、いったい何なのでしょうね?

もちろん、わかった上で一緒に並べることに意義を見出せない、メリットが何もないと判断した書店員さんも大勢いるのでしょうけど。