人形は怖い?

本日の鑑賞はこちらです。

 

一応、ホラーに分類される映画「デッド・サイレンス」です。人気シリーズ「ソウ」の監督・脚本コンビの作品と言うことで、それなりに期待されていたようですが、それほど怖いわけでもないですね。もちろん、人形というのは呪いとか怨念とか、そういったものが込められやすいので怖いものというのは日本でもありがちな設定ではありますが。

本作は、ある若い夫婦の元に差出人不明の腹話術の人形が送られてきて、その直後、夫の外出中に妻が惨殺されるところから始まります。当然のことながら夫が容疑者として疑われるわけですが、人形が入っていた箱に書かれていた言葉と、自分が育った故郷の言い伝えとの符号に気づき、夫は久しぶりに自分の故郷を訪れます。そこには大きな屋敷に体を壊して車椅子生活を送る父親と、その面倒を見ている若い後妻が暮らしています。

夫は、この村で妻の葬儀を執り行ない、葬儀屋のじいさんから村に伝わる忌まわしい事件の話を聞きます。それはかつて行方不明になった子供がいて、その誘拐犯として村で暮らす腹話術の人形遣いの女性が疑われ、村人によって惨殺されたという事件です。その女の鈍いが、惨殺した村人たちを皆殺しにしているというものです。

で、主人公もその皆殺しを行なった村人の子孫になるわけです。他の一族は惨殺直後に腹話術師の呪いで全員が殺されている(謎の死を遂げている)のに、なぜこの主人公の一族だけはこうして後嗣を残せたのか、作品中では一切説明はありません。脚本が破綻していると言えるかもしれません。

妻が殺されたのも、そのお腹の中に子供がいるから、一族皆殺しを遂げるためだったと明かされますが、そう言われればますます主人公が生き残ってきた理由が不明です。故郷を出て都会で暮らす主人公の元へ人形が送られてくるくらいですから、逃げても意味はなかったはずなのに……。

結局、ネタばらしをすると、故郷の父は既に死んでいて、父に見えたのは父の遺体を使って(?)作った精巧な腹話術の人形です。後妻が、惨殺された腹話術師の生まれ変わりなのか、甦った姿なのか、乗り移られているのかは知りませんが、とにかく犯人です。腹話術の技術を使って、父がいかにも生きて話しているように見せていただけです。

邪推というか、想像をたくましくするならば、他の一家はすべて皆殺しにし、残るは主人公の一族だけ。本妻を殺し、あとは当主だけと思ったところ、実はその当主には都会で暮らす息子がいたと、呪いの主である腹話術師(=悪霊?)は知ったのではないでしょうか? そこで当主を殺しつつも後妻のふりをして、いかにも当主はまだ生きているように見せかけて息子がここへやってくるように仕向けた、というところでしょうか? でも、妻を簡単に殺せたわけですから、都会にいたままでも息子(=主人公)を殺すことは出来たはずですが……

いずせにせよ、あっちこっちにストーリーのおかしなところがあり、冷静に見れば突っ込みどころ満載です。映像もグロテスクなところはあまりなく、視覚的な怖さもありません。殺された腹話術師の怨念も深く書かれているわけではないので、そういうゾクゾク来る怖さにも欠けています。ただ、現代の話なのに故郷での映像はちょっとクラシックな感じできれいと言えばきれいでした。