悲恋? 禁断の愛?

昨夕は映画「フランス組曲」の試写会。

もちろんイレーヌ・ネミロフスキーの原作『フランス組曲』は、あたしの勤務先の刊行物です。

駅で言うと神保町と竹橋の間、一ツ橋ホールでの試写会でしたが、かなり多くの方が来ていました。女性の比率が多く、思いのほか年齢層も高めだなあという気がしました。別に、お年寄りばかり、という意味ではないですけど。

さて、ストーリーですが……

映画と原作小説とで、内容にどのくらいが違いがあるのか、原作の方を読んでいないのでわかりませんが、映画は映画で面白かったです。でも先に不満というか、注文を付けるとすれば、主人公男女二人の許されざる恋はもう少し掘り下げてもよかったかな、ちょっと唐突と言いますか、あまりにもあっけなく心が通い合ってしまったような……

またドイツ兵もそれほど憎々しげには描かれていないのは、実際にはこの程度だったからでしょうか? 中国の日中戦争映画だと、これでもかと言うくらい日本兵を暴虐に描きますので、それに比べるとドイツ兵の暴虐ぶりは比較的穏やかで、それだけに事実はこんな感じだったのでは、という気がします。

そして義母の態度の豹変ぶりというか、主人公である嫁との関係が後半はあっさりしていて、このあたりも物足りなさが残ると言えば残ります。

という不平不満はこのくらいにして全体的な感想を述べます。

舞台はフランスの小都市ビュシー。そこで暮らす主人公はかなり裕福な地主の家に嫁いできて数年。ただし夫は戦地へ赴いて消息不明、手紙も来ないようです。彼女はいけずな義母と小作人の家を回ってはや品や小作料の取り立てをして暮らしていますが、内心では意地悪な義母の態度に忸怩たるものを感じつつも義母には逆らえない日々を送っています。

そんな暮らしの中、ドイツ軍の空襲、爆撃、そして進駐。主人公の屋敷にも将校が間借りをしにやってきます。ドイツへが特別ひどいことをするわけではありませんが、やはり住民たちは目に見えない圧迫を感じながら暮らしを営みます。若い女たちはドイツへに体を開いて歓心を買おう、自分の欲望を満たそうとしますが、徐々にフランスの敵なのか味方なのかという目で見られるようになってきます。そして、主人公も自分たちの屋敷に住まう将校がピアノを弾くのを聴き、心を動かされるのです。

さて、その将校。住民からの密告の文章を読むのが仕事。切羽詰まった住民たちは自分こそはドイツの見方と言わんばかりに、住民のあることないことをドイツ軍に告げ口してきます。そんな中、主人公の夫にもかつて愛人がいて、子供までもうけているという告発が届き、主人公はそれを目にしてしまいます。夫や義母に裏切られたことを知った主人公は一気に将校へと心を持って行かれてしまう、ここまでが前半。

さて後半は主人公の小作品の男が、自分の妻にまで色目を使うドイツへに堪忍袋の緒が切れ、ライフを持って出かけて行きますが、とりあえず発砲はしないでいます。ところがドイツ兵は住民がまだ武器を持っているということに気づき、さらに強引な家捜し、暴力、破壊を繰り返し、その小作人はとうとうドイツ兵を撃ち殺してしまいます。

なんとか逃げた小作人を主人公は自分の屋敷にかくまいますが、いつまでも隠しおおせるものではなく、対独レジスタンス運動が行なわれているパリへ小作人を送り届けようとします。そのためにはパリまでの通行証が必要で、主人公は心を通わせている将校に通行証の発行を頼みOKをもらいます。

そして小作人をトランクルームに乗せて主人公は車でパリへ。途中の検問所では、主人公を怪しんだ別の将校が「車の中をよく改めるように」という通達を出しておきます。そんなこととは知らない主人公は検問所で通行証を出しますが、トランクを開けろと言われ、開けた瞬間小作人が銃を発砲。そのまま飛び出してきて検問所のドイツへを撃ち殺します。

小作人も被弾しますが一命は取り留めます。そこへ主人公の身を案じた例の将校がバイクでやってきます。すべてを知った上で、将校はそのまま主人公たちを行かせてやるのです。

将校はその後の戦争で死んだ模様。主人公と小作人は無事パリに着き、レジスタンス運動に身を投じるのです。そんな主人公が屋敷を発つ前、部隊が移動することになり屋敷を辞去することになった将校は毎晩弾いていたピアノ曲の譜面を屋敷にある彼女のピアノの上に置いていきます。将校が作曲した曲のタイトルは「フランス組曲」。